サイバーエフェクト~タッチパネルは巧みだが、積み木は不器用な幼児が増えている

インターネットの子育てへの影響とは?親世代とは異なり、小さいころからデジタルにネイティブになっている子供たち。
「親の常識」での子育てが難しくなってきています。


DIAMOND ONLINEより、以下転載です。
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タッチパネルは巧みだが、積み木は不器用な幼児が増えている

■何歳から、どんなディスプレイで見せるのが良いのか?
 子ども向けのタブレットやアプリの宣伝においては、必ずと言ってよいほど「インタラクティブ」性に言及される。これは親の間で一種の流行語になっているが、それは彼らがどこかで、子どもの学習には受動的な観察よりも、「インタラクション」のほうが効果的だと見聞きしたからだろう。

 そして実際に、インタラクティブ性の高いアプリを使うことは子どもにとって、テレビを見るのとはまったく違う体験になるが、それはより優れているという意味ではない。

 タブレットインタラクティブ性は、幼い子どもにとっては、より注意力を奪い、過剰な刺激を与えてしまうものになるおそれがある。どんな画面でもそれに接する時間は一緒、というわけではないのだ。子どもにとって最善のコースとは、どのようなものだろうか?

 この点については、多くの意見が表明されている。私が主に懸念しているのは、何百万人という親が蚊帳の外に置かれるなかで、行動科学や社会科学に基づく形ではなく、企業のマーケティング担当者やテクノロジー業界の主導で、新しい習慣が生まれてしまうのではないかという点だ(「科学的根拠に基づく」子ども向けコンテンツが氾濫しているもかかわらず、それが実際の発育にどのような影響を与えているかについての研究がほとんど行われていないのは、皮肉と言うしかない)。

(中略)

 その一方で、非常に保守的な態度を取る人々もいる。たとえば子どもの発育に関する専門家で、NPO「ムービング・トゥ・ラーン」の創設者としても知られる発達期作業療法士のクリス・ローワンは、次のように、子どもにタブレットや携帯電話の画面を見せるのを制限することを推奨している。

〇3~5歳児の場合、テレビの視聴は1日1時間に限定する。
〇13歳未満の子どもに、ハンドヘルド機器やビデオゲームを与えることは勧められない。また13~18歳までは、ビデオゲームは1日30分以内に制限することが望ましい。

 ローワンによれば、いまや子どもの3人に1人が、発達が遅れた状態で学校に入学しており、識字能力や学業成績に悪影響が出ている。ムービング・トゥ・ラーンの主張は過激に思えるかもしれないが、問題の兆候は表れ始めている。

デジタルネイティブは現実世界では不利

 幼稚園に入園する子どもたちに、発達の遅れが見られることが増えているとの報告がなされているのだ。たとえば英国では、教員・講師協会(ATL)が、未就学児のタブレット使用の一般化に伴う問題(注意持続時間や運動能力、敏捷性、会話能力、社会性に関する発達の遅れ、ならびに攻撃的・反社会的行動や肥満、疲労感の増加)が拡大しつつあると発表している。

 タッチパネルを巧みにスワイプできるのに、積み木で遊ぶのに必要な手先の器用さは身につけていない――そんな子どもが入学してくることが増えていると、英国の教師たちは報告している。マンチェスターで開催された教師の会合では、「タブレット依存」に対処するアドバイスが求められた。

 また、北アイルランドのある教師は、幼い生徒たちが、夜寝る前にコンピュータゲームを長時間プレーしていると話している。その結果、彼らは学校に遅刻し、「デジタル二日酔い」とでも呼ぶべき状態で登校してくるそうだ。集中力の低下も著しく、当人は「まるで自分がその場にいないような状態」だと教師は訴えている。

 もし子どもがタブレットだけで遊び、本物の本を目にする機会がなかったとしたら、どうなるだろうか? 喜ぶような話ではないが、その答えを得るのには何時間もかからない。ユーチューブで検索すれば、ある1歳の女の子の映像を見ることができるだろう(現時点での再生回数は450万回だ)。

 映像の中で、赤ちゃんに紙の雑誌が与えられる。彼女はそれを膝の上に置く。そして自分の指で、タッチパネルに行うのと同じフリック操作を巧みに行い――紙のページに印刷されている画像が変わらないことに困惑した表情を見せる。次に彼女は、親指と人差し指で、タッチパネルで画像を大きくするときのような動作を見せる。しかしページをめくるという発想はないようだ。

 デジタルネイティブは画面の前では優れた行動を見せるかもしれないが、現実世界では不利な状況に置かれ、そこが自分の世界だと感じていないかもしれないということを、この赤ちゃんの行動は証明している。

(中略)

 ある日気づいたら、ベビーカーにいる赤ちゃんが高価なスマートフォンを抱えて遊んでいたり、幼児が小さな指で巧みタッチパネルを操作したりしていた、などということが起きています。あるいはショッピングモールで、子供たちのグループが一緒にいながら、手にした自分のデバイスだけに目を落としているのに気づくでしょう。いつの間にかこんなそんな世界になっているのです。

 母親がスマホに夢中でアイコンタクトが不足する赤ちゃん、過激なコンテンツへの接触やネットいじめに傷つく子供、ADHDとの関係、SNS・ゲーム・自撮りへの依存、尊厳を損う メッセージが蔓延するティーンエイジャー……問題は、噴出しています。

 絶え間ない変化の中で問題に対処する確実な方法のひとつは、サイバー環境が私たちにどのような影響を与えるかについて、より深く知ることです。人々、そして自分自身が、そこでどう行動するのかを理解することなのです。

以上
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時田 弘