部活動の週休2日制導入

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部活動の週休2日制導入が物議を醸している。

 スポーツ庁は「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を策定。今年に入ってその概要が少しずつ明らかにされ、14日にHP上にその内容が公表された。

 ガイドライン案に書かれているのは主に、(1)適切な運営のための体制整備、(2)合理的でかつ効率的・効果的な活動の推進のための取組、(3)適切な休養日等の設定、(4)生徒のニーズを踏まえたスポーツ環境の整備、などである。

 (3)のなかに「週当たり2日以上の休養日を設ける」という文言があり、世間を驚かせている。

 週休2日制導入ばかりがクローズアップされるが、ガイドラインにあるどれも、今後のスポーツ界において重要なことが書かれているというのがざっと読んでの感想だ。スポーツにおける指導そのものが新時代を迎えている印象を受けた。

 日本のスポーツ指導には、練習時間が多いことをよしとする風潮がまだ色濃くある。2月のプロ野球キャンプでも、ある球団の10時間練習が球界をにぎわしていたが、練習時間の多寡だけが語られるのは、その業界の体質の古さを物語っているといえる。

 そもそも、部活動の週休2日制度の導入は、単に練習時間の減少を促すだけのものではない。これから求められてくるのは、より効率的な指導だ。科学的根拠はなくても、あらゆるメニューを詰め込んだ長時間の練習をすれば、やった気にはなれる。しかし、短い時間の中で指導をするためには、理路整然とした練習内容が必要となるのだ。

■科学的トレーニングの必要性も強調。
 今回のガイドライン案には、効率的な練習、科学的トレーニングを推進する記述もある。以下がその抜粋だ。

<運動部顧問は、スポーツ医・科学の見地からは、トレーニング効果を得るために休養を適切に取ることが必要であること、また、過度の練習がスポーツ障害・外傷のリスクを高め、必ずしも体力・運動能力の向上につながらないこと等を正しく理解するとともに、生徒の体力の向上や、生涯を通じてスポーツに親しむ基礎を培うことができるよう、生徒とコミュニケーションを十分に図り、生徒がバーンアウトすることなく、技能や記録の向上等それぞれの目標を達成できるよう、競技種目の特性等を踏まえた科学的トレーニングの積極的な導入等により、休養を適切に取りつつ、短時間で効果が得られる指導を行う。

 また、専門的知見を有する保健体育担当の教師や養護教諭等と連携・協力し、発達の個人差や女子の成長期における体と心の状態等に関する正しい知識を得た上で指導を行う

■オフシーズン規定はGHQの意向でできた?
 ガイドラインをどこまで踏襲するのかは、それぞれの競技団体にゆだねられるだろうが、内からの改革を待つのではなく、外からの働きかけがあったことの意義は大きい。週休2日制度がニュースになることで、スポーツ指導の在り方が変わり、新たな潮流を生む可能性がある。

 日本高校野球連盟が採り入れているルールの1つに「オフシーズン規定」というものがある。これは12月~3月上旬までの試合を禁止するというもので、この期間は「全力プレーを避ける」狙いがある。

「豪雪地帯、寒冷地との公平性をはかるため」にこの規定が作られたという俗説は誤りだ。実は、日本高野連の内部だけで決められたルールではなく、戦後復興に向かう中で、GHQの進言を受けてつくられたのである。

■「1年じゅう野球をする気なのか」
 元日本高野連事務局長の田名部和裕氏が、あるシンポジウムでオフシーズン規定について事実を明かしている。

「オフシーズン規定というのは、私が連盟に入ったときも、なぜ始まったのかよく知られていませんでした。調べてみたところ、戦前にはないルールだったんです。戦争が終わって、GHQの査察があるなかで夏の甲子園大会を復活させようとしたところ、すぐにOKがでました。

 ところが、翌年に毎日新聞センバツを開催しようとすると、GHQからダメだと。『1年じゅう野球をする気なのか。色んなスポーツをやらないといけない』と言われたんです。しかし実際、戦後の苦しい経済事情の中でいろんなスポーツをするのは無理だということを話して、折り合ったのがオフシーズン規定。当初は12月~4月までだったんですけど、その期間は試合をやらないということになったんです」

 もし、GHQの査察がなければ、高校野球は小中学校のように1年じゅう試合のスケジュールが組まれていたのかもしれない。外からの意見によって、ルールをつくるようになったという経緯は興味深い話だ。

■私学の強豪校は完全には従わないだろうが。
 もちろん、スポーツに特化した私学の強豪校はこうしたルールには完全にはなびかないだろう。そのため制度導入当初は、公立校との差も生まれるかもしれない。しかし、「猛練習」から脱皮した指導者が手腕を発揮しはじめた時、時代はうねりをあげて変わるだろう。

 今後は、各競技団体が主催する大会の在り方も問われるようになる。

 今回のガイドラインには、学校単位だけではないチームやクラブが参加することを認めるなどの提案も盛り込まれている。個人的には、トーナメントからリーグ戦への移行も検討した方がいいと考えている。

 サッカーやバスケットボールではすでに育成年代のリーグ戦を採り入れているが、私が日ごろ取材している野球界はほぼすべての大会がトーナメント制で実施されていて、負ければ終わりのため、どうしても勝利が全てに優先され、エースの登板過多などが起こりやすい状態が続いている。

 スポーツの指導が変化し、あたらしいスポーツ文化が生まれることを願う。

 

 

 

 

匿名希望