「本の読み聞かせ」を今からでもやるべき理由

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わが子を「本が好きな子にしたい」。そう願っている親は多いと思います。本をよく読む子は語彙が豊かになり理解力や表現力も伸びます。知識が増えて知的好奇心も高くなり、勉強にも圧倒的によい影響があります。

 
では、どうしたら子どもを本好きにすることができるのでしょうか? なんと言っても効果があるのは読み聞かせです。本の中には、楽しいお話、不思議な物語、夢のような世界、面白い情報など、子どもがわくわくするものがいっぱい詰まっています。大好きなお父さん・お母さんの温もりを感じながら、本の世界に浸る時間は、子どもにとって至福のひとときです。


■子どもへの愛情が空回りする親にこそ有効

そして、この読み聞かせの時間は、実は親にとってもすばらしい時間になります。親は子どものことを愛してはいるのですが、実際にはがみがみしかることが多くて、その愛情が空回りしている人が多いのが実状です。そんな人でも、読み聞かせのときは空回りすることなく、かわいいわが子のために心を込めて本を読むことができます。やることが決まっている分、言葉で愛情を伝えたり良好なコミュニケーションをとったりするのが苦手な人には好都合ともいえます。

実際、こういう話があります。小学1年生の女の子の父親で会社員の吉田さん(仮名)という人がいます。吉田さんはもとは経理の担当でしたが、急な人事異動で営業を担当することになりました。慣れない仕事でストレスがたまり、営業成績が上がらないこともあり、イライラすることが増えました。

娘のはるみさん(仮名)とおしゃべりしたり遊んだりする時間も減りました。家にいるときも、はるみさんと遊ぶどころか、「片づけができていない」とか「ちゃんと勉強はしなきゃダメだ」などの小言が増えてしまいました。


吉田さんははるみさんをかわいがりたいという気持ちはあるのですが、それが小言という形になってしまったのです。そのときのことを思い出して、吉田さんは「あのころは、はるみとの触れ合い方がわからなくなっていたようです」と言っています。

そんな吉田さんの様子を心配した奥さんが一計を案じました。それは吉田さんに絵本の読み聞かせを頼むというものでした。そして毎夜、吉田さんによる絵本タイムが始まりました。はるみさんが言うには、「お父さんの読み方はお母さんのと全然違うので、同じ絵本でも別の絵本のように感じて面白い」そうです。

しばらくすると、決まった時刻になるとはるみさんが絵本を持って吉田さんのひざの上に無理やり乗ってくるようになりました。吉田さんもつまらないことで小言を言うことがほとんどなくなりました。いつも楽しい触れ合いをして、人間関係のよい循環が始まると、つまらない小言など言えなくなるものなのでしょう。今では、日曜日になると親子3人で一緒に図書館に絵本を借りに行くようになりました。一度に30冊くらい借りてくるそうです。けっこう重くて大変だそうですが、親子で一緒に運ぶのがまた楽しいとのことです。


はるみさんは、毎日絵本の世界に浸りながら、お父さんの愛情をたっぷり実感しています。お父さんのことがますます大好きになりましたし、心が満たされ幸せな気持ちでいっぱいです。こういうことが子どもの心を安定させ、自己肯定感と他者信頼感を育てます。このように、読み聞かせは本当によいものです。

■「続かない親」に伝えたいこと

ですから、私はよく「万難を排して、毎日読み聞かせの時間をとってください」と言っています。ときどきではなく毎日です。それほど価値のあることだからです。

でも、実際には行動に移す親ばかりではありませんし、たとえやり始めても続かない親が多いようです。忙しい、時間が取れない、ほかにもやることがたくさんある、仕事で疲れてそれどころではない、うっかり忘れてしまう、読む本がない、などの理由で続かない親が多いのです。

確かに、それらはすべてもっともな理由でしょうし、それぞれの家庭の事情もあるでしょう。それらの困難もわかったうえで、それでも何とかやってほしいと言いたいです。それが「万難を排して」という意味です。繰り返しになりますが、それほど価値のあることなのです。


■小学校4年生からでも十分間に合う

ところで、講演のときによく聞かれる質問が「読み聞かせは何年生までできますか?」というものです。これに決まりはありません。もちろん、子どもが嫌がるのを無理やりに行うのはやめたほうがいいです。ますます本が嫌いになってしまうからです。でも、子どもが嫌がらなければ、何年生でも大丈夫です。実際に、小学4年生から親が読み聞かせを始めて、本が好きになったという子もいます。

私が小学校の教師だったときは、5、6年生の子どもたちにも読み聞かせを行いました。私の場合、5、6年生を受け持ったときは、絵本より長編物語が多かったです。「ああ無情」は必ず読み聞かせました。

「ああ無情」は、犯罪者として生きていたジャン・バルジャンが、ミリエル司教の愛によって感化され改心していく物語です。ジャン・バルジャンの魂が浄化されていく過程は、思春期前期の子どもたちの心に深くしみ込んでいきます。

この物語を毎日少しずつ読み聞かせながら子どもたちの表情や反応を見ていると、それがよくわかります。特に印象深い場面は、改心したジャン・バルジャンの真の姿を知った刑事ジャベールが、自分を恥じて入水する場面です。


ここで、子どもたちは尋常ならざる感銘を受けます。し~んとして物音一つ出ません。この時間は、子どもたちが人間の生きることの意味に思い至る得がたいひとときです。

このようなすばらしい時間を、教師とクラスのすべての子どもたちが共有できることは、長編物語を読み聞かせたときの大きな効果であり、功徳といってよいくらいのものだと感じたものです。長編物語の読み聞かせには時間がかかりますが、その分、より大きな感動の共有が可能になります。それは絵本にはないものだと思います。そして、これは親子の間でも可能なはずです。

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匿名希望