なぜ子供は叱れば叱るほど"悪さ"をするか~親なら知っておきたい子供の脳科学

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なぜ子供は叱れば叱るほど"悪さ"をするか
親なら知っておきたい子供の脳科学

いくら「ダメ!」と叱ってもいたずらをやめない。親もつい感情がエスカレートし、小さい子を怒鳴りつけて後悔する――。そんな悪循環から抜け出すにはどうすればいいのか。作業療法士で、脳のリハビリテーションを専門にしている菅原洋平氏は、「脳の生理学的な仕組みを理解すれば、子育てはラクになる」とアドバイスする――。

■なぜわが子の行動にイライラするのか

職場で疲弊して帰ってくる親御さんにとって、家で帰りを待ってくれているわが子の存在は、毎日の生活の活力源になっていることでしょう。帰宅したとき、わが子が笑顔で「おかえり」と言ってくれれば、1日のストレスも吹っ飛びます。

しかし、子どもの行動は時に大人にとって不可解なもの。わが子が理解できない行動をとり、親の言うことにもなかなか従わないと、私たちはイライラしてむしろストレスをためてしまいます。つい感情に任せて子どもを怒鳴ってしまい、あとから後悔する、なんてことも……。

私たちは、病院や様々な企業でこうした子育てに関する相談を受けてきました。私たちの職業である作業療法士は、生理学をもとに脳の仕組みを活用することでこれらの問題に解決策を導き出します。忙しい生活の中で、「気持ちに余裕を持とう」などの精神論では、問題を解決するのは難しいです。

(中略)

■「ダメ!」と言われてもやめないのはドーパミンのせい

例えば、「子どもの不可解な行動」のよくある例として、「やめなさい」と親が言えば言うほど、挑発するようにその行為を続ける、というものがあります。

ある企業の研修でお聞きした、次のような子どもの行動と親御さんの反応を例に挙げましょう。おもちゃを窓ガラスにたたきつけて遊び始めたわが子に、親が「そんなこと、したらダメ!」と声をかけたところ、子どもは確かにチラリとこちらを見たのに、そのまま同じ動作を続けたそうです。

当然、親御さんは激怒しますが、子どもはなかなかその行為をやめず、結局は親御さんが強引にその遊びをやめさせ、怒られた子どもは泣き出したとのこと。こんなシーンがよく繰り返されるそうで、相談者はそのことでイライラを募らせているようでした。

細部は違っても、こうした子どもとのやり取りは、子育て中の家庭ではよくあることではないでしょうか。そして、そんなとき親は、「この子は、どこまでやったら私がキレるのか試しているに違いない」とか、「もしかして、うちの子はちょっと性格が悪いのかな?」などと思ってしまいがちです。

しかし、これは間違いです。こうした行動は生理学的な脳の仕組み、中でも脳内でのドーパミンという神経伝達物質の働きが、子どもに自然とそうした行動をとらせているだけです。子どもの性格は、実はまったく関係ありません。

■親の強い反応が「リピート」を生む

(中略)

子どもの脳が何か新しい刺激を受けたとき、脳内ではドーパミンという神経伝達物質が分泌されます。このドーパミンには、「分泌前にした行動に過剰に注意を向ける」という作用があります。

おもちゃの例で言えば、窓ガラスにこれをたたきつけて遊び始めた子どもの行動に、親が激しく反応して、これまでにはない表情や言動をしました。これは、子どもの脳にとっては新しい刺激ですから、大いにドーパミンが分泌されます。すると、ドーパミンの作用で、怒鳴られる前にしていた「おもちゃを窓ガラスにたたきつける」という行動に意識が集中させられて、子どもはそれを繰り返そうとします。

子どもはドーパミンの作用で行動しているだけなのですが、親の視点からこの行動を見ると、「言えば言うほど、子どもが挑発するようにその行為を続ける」かのように映る、というわけです。

■もじもじするのは「集中しよう」としているから

もうひとつ、例を挙げましょう。ここぞという大事な場面で、子どもがもじもじと体を動かし続けることがあります。わが子のそうした様子を見た親は、「なんで、こんな大事なときに……」「ホントに落ち着きのない子だなぁ……」などと思うのですが、実はこれも、脳の仕組みが引き起こす現象です。

子どもが緊張して、集中しようとすると、脳内ではヒスタミンという神経伝達物質が分泌されます。このヒスタミンには、「脳を目覚めさせて集中させる」作用があるのですが、同時に「体にかゆみを生じさせる」作用もあります。

つまり、子どもが真剣に話を聞こうとすればするほど、ヒスタミンの作用で体がかゆくなりやすくなるので、それを紛らわそうとしてもじもじ動き、落ち着きなく見えるようになる、ということです。

(中略)

■親自身のイライラも「脳の仕組み」のせい

(中略)

また、そもそも親が子どもの行動に過剰にイライラしてしまうのも、同じような脳内の仕組みから来ている現象です。

例えば、子どもが何か新しい“不可解な行動”をとると、その刺激で親の脳でもドーパミンが分泌されます。口では「やめなさい!」と言っても、ドーパミンの働きで子どもの行動に過剰に注意が向いていますから、脳内では「やるぞやるぞ……ほらやった!」と、子どもが同じ行動を繰り返すのを待ち構えてしまいます。

こうなると、子どもはやめず、親は怒鳴ることを繰り返し、表面的な対立がエスカレートしてしまいます。

■「子供の性格の問題」と決めつけないように

さらに、ただの生理的な反応にすぎない行動を、親が子どもの“性格の問題”だと考えてしまうと、「うちの子はこんな子」と決めつけて、親も子もその考えに縛られてしまいます。
 子どものさまざまな可能性やチャンスを、見逃してしまう危険性があるのです。

そうではなく、自分がイライラしている理由や、子どもの一見不可解な行動の背景に、脳内の生理的な反応があることを知ることが大切です。

 

 

 

 

時田 弘