母乳が赤ちゃんの腸内細菌の構成を整えている

腸内細菌叢の状態が、心身の調子に大きく影響を及ぼすことはよく知られています。その腸内細菌の構成は、赤ちゃんが摂取する母乳に含まれるアミノ酸代謝酵素遺伝子によって整えられていることが明らかになりました。
母乳に含まれているアミノ酸代謝酵素遺伝子は、赤ちゃんの消化管内でも機能を失わずにアミノ酸を分解して過酸化水素を産生し、その過酸化水素が特定の菌以外の細菌を除外することにより、その種に固有(有用な)腸内細菌叢を形成しているようです。

◇母乳が赤ちゃんの腸内細菌叢を制御する機構の解明―過酸化水素が乳酸菌を増やす!?― リンク
東京農工大学プレスリリース>より
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 生物進化の過程で、我々哺乳類は母乳で子を育てる戦略を選択してきました。一方で、哺乳類にとって腸内細菌叢は生体の恒常性維持に重要であり、腸内細菌叢の乱れがガンや生活習慣病認知症の発症リスクを高めることが分かってきました。腸内細菌叢は生まれて間もなく形成が開始され、離乳などのイベントを経て徐々に大人の菌叢へと近づいていきます。一般的に哺乳期間を含む腸内細菌叢の形成過程に獲得した腸内細菌は、多少のバランスの変化は起こり得るものの生涯不変といわれており、老化と共に乳酸菌やビフィズス菌といったいわゆる善玉菌が減少する以外、基本菌叢パターンを大きく変えることは難しいとされています。乳製品などを摂取して一時的に菌叢を変えることができても、摂取をやめると元に戻ってしまう理由がここにあります。すなわち、哺乳中に形成される腸内細菌叢を如何にして正常な菌叢に整えるかが重要となり、母乳中にその秘密が隠されていると考えています。

~中略~

 本研究では、マウスの母乳中に多く含まれるアミノ酸代謝酵素遺伝子(LAO1注1)を欠損させたマウス(LAO1欠損マウス)を用いて、母乳にLAO1が含まれるか否かで子の腸内細菌叢が変化するかを遺伝子レベルと培養レベルで調べました。その結果、野生型(注2)の母マウスから母乳を摂取している子マウスの腸内細菌叢は従来の報告通り、そのほとんどが乳酸菌で占められ菌の多様性(注3)は抑えられていました。しかし、LAO1欠損の母マウスの母乳を飲んでいる子マウスの腸内細菌叢には様々な菌が存在し、すでに大人の菌叢に近い状態でした。また、LAO1は乳子の消化管内でも機能を失わずアミノ酸を分解して過酸化水素を産生すること、過酸化水素は乳酸菌以外の細菌に対して抗菌性を示すことを確認しました。
 これらの結果から、野生型の母乳を飲むと菌の多様性が抑えられる仕組みとして、乳子の消化管内で産生される過酸化水素が外部から侵入してくる細菌群から選別し乳酸菌を優先的に届けていることが考えられました。人においても母乳を飲んでいる赤ちゃんの菌の多様性は抑えられており、母乳摂取を止めると多様性が増えていくことが知られています。しかし今回、人の母乳を用いた実験ではアミノ酸代謝による過酸化水素産生はマウスに比べてかなり低いことが示されました。この結果は、人の赤ちゃんの腸内細菌叢では乳酸菌がそれほど増えない理由の説明につながるかもしれません(人の赤ちゃんの優占菌はビフィズス菌とされています)。

~後略~
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稲依小石丸