なぜ「五感を使うのが大事」と言われるのか?

潜在思念を生み出す本能と共認機能。この両機能の充足体験度に潜在思念の豊かさは規定される。
言葉にならない(言葉以前の想い)をキャッチし、それを形にする(応える)ことが求められる時代。どうしたら、本能機能の充足体験度を上げることができるのか。
ここでも改めて赤ん坊が最高のモデルであることが紹介されている記事があったため紹介。

以下、「なぜ「五感を使うのが大事」と言われるのか?/臼井 隆志(ワークショップデザイナー)」より転載リンク
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こんにちは、臼井隆志(@TakashiUSUI)です。普段は0~2歳の赤ちゃん+保護者向けワークショップの開発とファシリテーションをしています。ここでは「子どもの探索活動」をキーワードに子どもの認知・発達・振る舞いについてのリサーチ過程を公開していきます。

前回の記事では、赤ちゃんが「未知のもの」に触れるとき、周囲の大人が「大丈夫だよ!」と不安をケアし、チャレンジを共感的に見守るとき、安心と勇気が得られるという話を書きました。

そのなかで「未知のもの」の事例として「雪」を出しました。不安を克服してからの「冷たい!」「しゃりしゃり音がなる!」「溶ける!」というような雪の感触はとても面白いようで、ぼくもワークショップでかき氷をつくって赤ちゃんたちに触ってもらっています。

こうした感覚を楽しむ遊びを「Sensory Play」と呼び、海外ではパスタや米粒を食紅で染めて混ぜたりちぎったりして遊んでいます。よく赤ちゃん向けの知育玩具のパッケージにも「赤ちゃんの五感を刺激!」と書いてありますが、なぜ「五感を使うのが大事」と言われているのでしょうか?

■赤ちゃんは「感覚」を頼りに世界を知る
現代は「視覚偏重の時代」と言われて久しいですが、ぼくたちは、朝目覚まし時計の音をやかましく思ったり、靴の履き心地を確かめたり、電車に乗っているときに揺れを感じたり、いろんな感覚を頼りに日々の生活を送っています。

言葉や記号以前の世界を生きている赤ちゃんにとって感覚こそが世界を知るための手立てです。しかし、生まれてすぐは自分の身体をうまく操作できません。

身の回りにあるものを見たり、自分で自分の身体に触れたり(あるいは人に触れられたり)、人の声や物音を聞いたりして、次第に身体をうまく使えるようになっていきます。そのために、全身のさまざまな「感覚」で情報を入手し、「運動」を通して世界に働きかけることを繰り返しています。(このことをぼくは「探索行動」と呼んでいます)

だからこそ「五感を使うのが大事」だと言われているのでしょう。

■赤ちゃんは「五感」よりももっと多くの感覚を使っている
ところが、赤ちゃんは「五感」だけを使っているわけではありません。「五感」とは一般的に視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚のことですが、たいていの場合はこの5つのなかの視覚・聴覚・触覚の3つを扱っています。

ですが、実はもっと多くの感覚を使っています。

上はせんべいを食べる子どもの図ですが、五感以外にもいろんな感覚があります。

ちなみに「五感刺激」というとき、ちゃんと「五感」を刺激しているものは赤ちゃん用の「せんべい」のようなお菓子以外にはあまりないと思います。

味も、匂いも、食感も、見た目も音も楽しい!という意味では、大人の世界では「そば」が思い浮かびます。離乳食のなかでも、うどんやパスタのことをまとめて「ちゅるちゅる」と呼んだりしますが、赤ちゃんと食の間には、豊かな感覚体験があると言えるでしょう。(このあたりのことはコラムで書きたいと思います!)

■バランスと身体の位置・動き・力加減
赤ちゃんの探索行動にとって重要な二つの感覚を簡単に紹介しておきます。
平衡感覚は、全身のバランスや顔の向きを察知する感覚です。トランポリンや平均台などの遊具で遊ぶときなどに使われるイメージがあるかもしれませんが、横から音が鳴ったときに、顔を向けて音の原因を見ようと思ったときなどにもこの感覚が働いています。顔の動きとともに、目の動きもサポートしている感覚です。

固有受容覚は、関節や筋肉の位置・動き・力加減を察知する感覚です。「わたしのからだがここにある」ということを実感するための感覚とも言えます。ヨガでは「タダーサナ」という、ただ立っているだけに見えて立つことに全力で意識を向けるポーズがあるそうです。これはこの固有受容覚に注意を向けていると言えるでしょう。

■雪に触れるときに働いている感覚
では、こうした感覚はどのように組み合わせられているのか。前回書いた「雪に触れる」ときに段階ごとに使っている感覚をざっくりと見てみましょう。

1. 雪を見て近づく(平衡感覚+視覚+固有受容覚) 
2. 姿勢をキープ (固有受容覚)
3. 片腕を上げる (視覚+固有需要覚)
4. 指を伸ばす  (固有需要覚)
5. 氷に触れる  (触覚)
6. 冷たさを感じる(冷覚)

このとき、対象をずっと見ていればずっと視覚が働いています。そして同時に固有受容覚でもって自分の姿勢を感知しています。そのうえで最後の触覚が働きます。

■まとめ
このようにして、ぼくたちはぼくたちは物に触れるとき、複数の感覚を総動員し、一つの対象に向けています。平衡感覚と固有受容覚で姿勢と運動を制御し、視覚でものを捉え、触覚でそのものの硬さや温度を知る。大人にとっては超当たり前のことですが、赤ちゃんはこうした複数の感覚を同時に使うことをトレーニングして身につけているのです。

ですから、赤ちゃんがたくさんの感覚を使える環境をつくることで健やかに育つと考えられるので「赤ちゃんの五感を刺激!」と書かれた玩具が多く販売されているのでしょう。

しかし、むやみやたらと感覚を刺激すれば良いわけではありません。複数の感覚を総動員して一つの対象に向ける「注意」が必要になります。注意とは、気をつけることではなく、意を注ぐことです。

赤ちゃんが今何に注意を向けているのかをよく観察することや、赤ちゃんが注意しやすい環境をつくることが、赤ちゃんのよりよい探索環境をつくる鍵になります。とりわけ、赤ちゃんの体の内側を想像し、姿勢やバランスの取り方まで見てみると面白いと思います。

 

 


柴田英明