つまづいた子供を潰す親、伸ばす親

子育ては、たいてい親の思うようにいかない。

・勉強をせず、親に隠れてゲームばかりやっている。
・習い事は続かず、何事もがんばることができない。
・高い塾代をかけたのに、受験では第1志望校に不合格。
・朝、自分で起きることができず、あげくの果てに何年も学校に行けなくなる――。

わが子がそんな負のスパイラルに陥った時、親はどうしたらいいのだろうか。

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◆「ダメな子供も、ありのままを受け入れる」
今回、4人の東大生とその親を取材して強く印象に残ったのは、多くの親が「そんなんではダメでしょ」とつい小言を言ってしまいそうな状態でも、わりと放置していたということだ。

小学3年生の頃にいじめをきっかけに人間不信に陥って以来、「ゲームがお友達」状態になった山越遼一さん(文学部4年生)。勉強そっちのけでゲームばかりしていたことを、共働きで忙しかった両親も気づいていたが、ゲームを取り上げたり、頭ごなしに叱ったりしなかったという。

母親は私たちの取材にこう話した。

「親が叱って勉強を無理にさせても、意味はないですよね。『自分の人生なんだから、自分で責任を持って決める』というのが、うちの教育方針。ゲームをやりすぎているなとは思っていましたが、本人が気づくのを待っていました」

教養学部1年生の指原佑佳さんは、飽きっぽい性格で小学生時代、どんな習い事も長続きしなかった。でも本人がイヤになって辞めても、そのこと自体で叱られることはなかったという。その代わり、両親からこんな声をかけられたそうだ。

「続けることで幸せじゃなくなるなら、やらなくていいよ」

勉強をするのも、習い事をがんばるのも、本人次第。父親も母親も、親が押し付けてできることではないという、ある種の割り切りを持っていたのだ。


◆「結果ではなく、過程に注目する」
心のエネルギーが十分に貯まれば、子供は自ら「成長したい」「何者かになりたい」と努力をするようになる。

だが、努力をしたからといって、望む結果が得られるわけではないのが人生だ。今回取材した親たちは「結果」より、「努力の過程」を大切にしていることも印象的だった。

医学部5年生の松永尚也さんは、小学校時代、進学塾に通ってがんばって勉強したものの中学受験で第1志望に落ちてしまう。気落ちしている尚也さんに母親は、「精いっぱい、力を尽くしたんだから、いいのよ。これも人生。受かった学校にこそ、縁があるんだよ」と声をかけてくれた。「気持ちがすごくラクになりました。そうか、そういう考え方もあるのかと前向きになれた。発想の転換を教えてもらった気がします」(尚也さん)

習い事が長続きしなかった前出・指原さんも小学校高学年で学ぶことの楽しさに目覚めて、中学受験をすることになったが、6年生の秋頃には「努力しても、落ちてしまったらどうなるんやろ」と急に不安に襲われたという。そんな時、両親は「わたしたちは合格しなくたっていいと思っているんだよ。いままで積み重ねてきた過程が誇らしいから」と言ってくれた。指原さんは、この言葉で「何のために勉強しているのかわかった」という。「大事なのは結果ではなく、努力の過程。合格発表を待たずして、努力が報われた瞬間でした」と語る。


◆テスト結果や偏差値「数字」ではなく「努力の過程」に着目
テストの点が悪い。偏差値が下がった。受験で志望校に不合格になった――。

「結果」に注目すると、子供を叱って、発破をかけたくなることが増えてしまう。しかし、「努力の過程」に着目すれば、何かしら認めてやれることがあるはずだ。「ダメ」地点からスタートするなら、なおのこと。成長を感じられる場面は多いだろう。

そうして気づいた時に、子供は親の想像を超えた高みに登っていたというのが今回取材した親御さんの実感だった。自分の子がまさか東大に入るとは思っておらず、心底驚いたという方が多いのも興味深かった。

ちなみに、中学受験で第1志望校に落ちた松永さんは、第2志望に進んだわけだが、入学早々に学年で上位の成績を取ることができた。そこで自信を持つことができ、理系の選抜クラスに入って東大理科Ⅰ類(2年が終わったときの進学選択で医学部へ)に合格した。


◆「親が、自分自身の人生を生きる」
「努力の過程」に注目すると言われても、ダラダラ過ごしているのが目に入れば小言の一つもいいたくなるというものだ。であれば、あまり見ないということをオススメしたい。今回取材した東大生の親は、共働きをしている方も多く、付きっきりで子どもを見ていなかった点も良かったのかもしれないと感じた。

指原さんは言う。

「働いたり趣味を楽しんだりする母を見て育ったおかげで、迷うことなく自分の夢を膨らませてこられました。母も共働き家庭だったのですが、その時の寂しさからご飯だけはどんなに忙しくても家族と食べると決めたそうです。そう聞いてから働く母を恨めしく思わなくなりました。子供に依存しすぎず、自分らしく生きることが子どもにとって『大人になりたい』と思える、やる気に繋がるロールモデルになると思います」


(引用終わり)

 

 

井垣義稀