体を動かすことで集中力も高まる

人間は本能的に、いざという時に集中力を発揮するためには、普段から体を動かしていることが必要なようです。

以下、アンデシュ・ハンセン著「スマホ脳」より引用
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 不安に陥りやすい大学生を2つのグループに分け、片方にはきついトレーニング(最大心拍数×60~90%の運動強度のランニングを20分)を、もう片方には緩いトレーニン (散歩を20分)をさせた。トレーニングは週に3回、2週間で合計6回行われた。どちらも、普通の人にできるようなレベルのトレーニングだ。6回のトレーニング後、散歩組もランニング組も不安の度合いは下がったが、特に効果が顕著だったのはランニング組のほうだ。不安の軽減が運動直後だけでなく、その後2時間続いた。その効果はさらに長く統き、トレーニングプログラム終了の1週間後も、不安のレベルは依然低いままだったのだ。
 世界保健機関(WHO)によれば、現在19人に1人が不安障害を抱えている。興味深いのは、よく運動をしている人たちにはそれほど不安障害が見られないことだ。これでも、運動が不安を予防するというのをまだ信じられないだろうか。大丈夫。合計700人近くの患者を対象にした15件の研究をまとめると、こんな結果が得られる。運動やトレーニングをすることで、不安から身を守ることができる。不安障害の診断を受けていても、正常の範囲内の不安であってもだ。これまでの調査と同様、心拍数が上がる運動によって最大の効果を得られる。

 ストレスや不安を抱えた患者に、身体を動かすとそれらが軽減されると説明すると、 戸惑われることが多い。「リラックスしたほうが効果があるんじゃないの?」と思うようだ。人間は地球上での時間の99%、ストレスの大部分が「闘争か逃走か」という類の危険に結びついていた。身体のコンディションがよければ、慌てて逃げるにしても攻撃に出るにしても、その場を切り抜けられる確率が上がる。よく身体を鍛えている人はストレスのシステムを急激に作動させる必要もなく、脅威の対象から走って逃げることができた。身体をバニックのギアに入れなくてよかったのだ。
 ストレスのシステム自体はサバンナ時代から変化していないため、結果として、身体のコンディションがよい人ほどライオンから逃げるのが得意なだけでなく、現代社会のストレス源に対処するのも得意になる。普段からランニングをしている会計士が、決算前の忙しい時期にも同僚ほどストレスを受けないのには生物学的な理由がある。ストレスのシステムが「ストレスとは猛獣から走って逃げること」だった時代に形成されたからだ。身体を鍛えているおかげで、四半期報告書に目を通したりプレゼンしたりするときにも、あまりストレスシステムを作動させずにすむ。

 身体を動かすとストレスへの耐性がつくし、現代では貴重品になった集中力を与えてくれるから、デジタルな時代を生き抜く助けにもなる。ただ問題は、運動量がどんどん減っていることだ。今でも狩猟採集民として原始的な農耕社会に暮らす部族を調査すると、私たちの祖先は毎日1万4000歩から1万8000歩、歩いていたと思われる。 今の私たちは1日5000歩にも満たない。そしてその数字は10年ごとに減っている。スウェーデン人の平均的な体力は0年代から11%下がり、現在は大人の半数近くが、健康に害が及ぶほど身体のコンディションが悪い。特に悪いのは若い人たちだ。14歳の運動量は2000年頃と比べると女子で24%、男子で30%減っている。人類史上、これほど急速に減少したことはなかったはずだ。14歳の運動量が減ったいちばんの理由は? スクリーンばかり見ているせいだ。

以上

 

 

 

大嶋洋一