脳科学から見た愛着―愛情が不足することによる脳への影響―

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脳科学から見た愛着(アタッチメント)について

栃木県カウンセリング協会を講師とする保育者向けの研修がありました。
幼稚園として、また個人としてもこのような研修に参加することもありますが、今回の研修の大まかな内容をぜひ親御様方にも理解していただきたく、掲載いたします。
少し長くなりますがお時間ありましたらご覧ください。

愛着障害という言葉が近年叫ばれるようになりましたが皆さまご存知でしょうか。
簡単に言えば【思春期以降の精神症状や問題行動は、幼少期に受けた愛情を含む育ちに起因する】ということです。

この愛着障害による症状として
・無気力や無関心になる、イライラしやすくなる。
・多動になる、ケンカが絶えなくなる、強い刺激を求めるような行動ばかりする。
・孤独感や疎外感を持つ、心から楽しんだりできない。
といったものが挙げられます(※全てが愛着障害によるものではないし、もちろん個人差はあります)
こういった心の動きは、専門家が診断しても、愛着障害によるものなのか、発達障害によるものなのか、ということは、見分けがつきにくいそうです。

それでも、子どもにとって大人(特に親)から受ける愛情が不足することによる脳への影響は、2000年代から医学的に研究・証明されています。

実際、愛情をほとんど受けずに育った子どもの脳が、本来の脳と異なる形や大きさに変形している、といった研究結果もあるそうです。

また、人間の脳には「感受性期」という脳のそれぞれの領域に様々な感情が大きく育つ時期があります。上の表を見て貰えば分かる様に
記憶と感受性を司る海馬は、3歳〜5歳頃に大きく変容します。
この感受性期に大きなストレスを受けると脳が萎縮したり肥大する危険性が高まります。
同時に、この時期、子どもが大きなストレスを感じると心と身体の統一がバラバラになり
感情のコントロールに支障をきたします。
「今、この瞬間ある目の前の苦しみ」を乗り越えるため、心のブレーカーを落とし、心を守る防衛本能が働きます。
この心の働きにより、幼少期には発現しなくとも、思春期以降に「人の気持ちが分からず傷つけてしまう」「自傷行為や薬物への依存」といった可能性が高まります。

では、この感受性期に子どもに大きなストレスを与えないために、どうすれば良いか。

最も重要になるのは、冒頭で述べた愛着を形成するということです。

具体的に言うと
・子どもとのスキンシップによる愛情を形成する(愛情ホルモンである、オキシトシンの分泌を促す)こと
・「良い子ども」に育てよう育てようとしすぎず、その子自身の個性を認めること(=褒め育てをすること)
・虐待をしないこと
等が挙げられます。

ここで注意しなければならないのは虐待には様々なものがあるということです。
体罰等の身体的なもの
②言葉による罵倒など
③夫婦喧嘩等を子どもが目撃、聞いてしまうこと(面前DV)
④ネグレクト(育児放棄
⑤性的なもの
以上、5つに大分されます。

特に注意が必要なのは
②の言葉による虐待と
③の夫婦喧嘩を目撃するという「面前DV」という虐待で、一般的な発達障害で見られる症状より脳の発達に大きな欠落が生まれるという研究結果が出ているそうです。
夫婦喧嘩を見 聞きされることが、子どもの脳の成長に影響を及ぼすとは考えにくいと思いますが、自分の信じている親が、もう一方の親のことを罵る・否定するということは、
子どもにとっては、「信じる人が否定され、信じる人を失う」ということにもなります。

その現実から逃避し、脳が傷つくのを防ぐため、脳の「視覚野」と「聴覚野」が萎縮します。

そうすることによって、見たくないものは、見なくて済むように聞きたくないものは、聞かなくて済むように脳は変形し成長していきます。

結果、成長した後(思春期頃)に
・他人の表情や感情を読み取る能力が低下しコミュニケーションが上手く出来ない
聴覚障害による言葉の獲得の遅れ
等につながっていきます。
日々の育児や家事等に追われる中で、そこまで気が回らない、手が回らないというのが実情であるとも思いますが
自身の立ち振る舞いが子どもの脳の成長に悪影響を及ぼすこと。逆に、たくさんの愛情をそそいで接することにより、健全な脳の成長に繋がる。ということが、今回の研修の大まかな内容です。

 

 

 

穴瀬博一