ワクワクが最強なこれだけの理由。子どもの「好き」と「楽しい」を否定してはいけない
ワクワクが最強なこれだけの理由。子どもの「好き」と「楽しい」を否定してはいけない
(リンク)より転載
**************************
■ワクワクドキドキした心の状態=「プレイフル」の驚くべき効果
子どもはもともと好奇心旺盛で、どんなことでも楽しむ天才です。「これの何がそんなに楽しいの!?」と大人が思うようなことでも、子どもにとっては新鮮でワクワクする貴重な体験になりうるのです。
教育工学を専門とする上田信行氏は、著書『プレイフル・シンキング』(宣伝会議)のなかで、次のように述べています。
“何かにワクワクするのは、それがまだ誰も見たことのないものだったり、誰も成し遂げていないことだったりするからだ。その反面、前例がないため失敗のリスクと背中合わせでもある。だから、不安でドキドキする。ワクワクドキドキすることをやりきろうとするのは、はっきり言って、いばらの道だ。それでもあきらめずに前進し続けたら、世の中の人々を「あっ」と驚かせるようなことを成し遂げられるかもしれない。そのときの感動も大きなものになるはずだ。”
(引用元:上田信行(2020),『プレイフル・シンキング[決定版]働く人と場を楽しくする思考法』, 宣伝会議.)
ワクワクドキドキする気持ちは、自分を成長させるための原動力にもなるのですね。上田氏は、知的好奇心や興味のスイッチが入って、夢中になってチャレンジしている状態を「プレイフル」と定義しています。「プレイフル」とは、直訳すると「遊びであふれている状態」。何かに没頭して夢中になっている、ワクワクする気持ちがあふれている状態をイメージするといいでしょう。
「楽しさ」は脳への報酬となり、意欲を増進させます。さらに、「おもしろい」と感じたことは脳に記憶されやすく、楽しみながら学んだことほど脳に定着するのです。「口角を上げると脳のなかでドーパミンという快楽物質の分泌が盛んになり、記憶効率が高まりスキルアップしやすくなることがわかっている」と、脳科学者の篠原菊紀氏が述べるように、ワクワクして「楽しい!」と勉強したときほど、学習が結果に結びつくのです。
勉強以外でも、子どもの体や心が健やかに成長するためには「ワクワク」が欠かせません。もちろん大人になってしまった私たちだって、ワクワクしない毎日を過ごすより、ワクワクがあふれた日々を送るほうが何倍もいいはずです。
(中略)
■ワクワクドキドキ体験は体と心の発達を促す!?
(中略)
では、どうすれば、子どものやる気や意欲が刺激されるのでしょう? そうです、その答えは、「ワクワクドキドキ体験」です。ある幼稚園では、毎朝20分程度「じゃれつき遊び」と称して、引っ張り合ったりくすぐったり、先生や両親に抱っこや肩車をしてもらったりして、体を密着させながら遊ぶことを試みました。すると、すぐに「疲れた」と言う子や、ソワソワして落ち着きのない子が減り、興奮と抑制のバランスが身についた子どもが約50%を占めるほどになったそうです。
また別の小学校では、始業前の約15分間を使って、ボール遊びや鬼ごっこなど体を思いきり動かして遊ぶ「ワクワク・ドキドキタイム」を設けました。こちらも同様に、実施してから5年間で落ち着きのない子どもが半分近くに減ったのだそう。「やらされていると思って遊ぶのではなく、主体的に自ら遊びたいと思うことが重要で、そのことが脳を刺激し、発達を促すことにつながる」と野井氏が言うように、楽しく遊んで芽生えた「ワクワク」が、体や心の発達を促すのです。
しかし、「子どもには本来、楽しく遊んで、心が揺さぶられる体験をしたいという欲求が備わっている」にもかかわらず、いまの時代は「時間・仲間・空間」がなくなってきていますよね。ですから、ワクワクドキドキする環境を大人が用意してあげることが必要です。(中略)
■「学び」と「遊び」に境界線はない。ワクワクが学びにつながる!
先に述べたように、脳の発達のためにも、勉強で結果を出すためにも「ワクワク」は欠かせません。ところが、立命館大学大学院准教授の荒木寿友氏によると、「これまで教育界では、ワクワクすることは避けられていたように感じる」のだそう。その理由として、「勉強とは苦しみながら努力して身につけていくもの」というマインドが根本にあったということが挙げられます。
しかしいまでは、学びの「着火剤」としての役割が「ワクワク」にあることを多くの指導者が説いています。学びの興味関心を育てる学習塾エイスクール(a.school)代表の岩田拓真氏もそのひとり。
岩田氏は著書『「勉強しなさい」より「一緒にゲームしない?」』(主婦と生活社)のなかで、「『遊び』と『学び』に境界線はない」と断言しています。勉強と遊びをイコールに近づけるために欠かせないのは「夢中」、つまり「ワクワクする気持ち」。親が「遊び」と「学び」を切り分けず、子どもの「ワクワク」を尊重することで、子どもは自発的に学ぶようになります。
「楽しさのなかにこそ学びがある」という考えは、まさに「プレイフル・ラーニング」です。慶應義塾大学環境情報部教授の今井むつみ氏は、「子どもが興味をもっていないのに、大人が設定した場に子どもを押し込んでもプレイフルではない」ときっぱり。逆に、「はたから見れば遊んでいるようには見えなくても、子ども本人が楽しんでいれば、その学びはプレイフル・ラーニングと言える」とのこと。
つまり、子ども自身が楽しいと思えるか、楽しみながら取り組めるか、という点が何よりも重要だということ。人間の集中力や記憶力には限界がありますが、自分が興味をもっていることに対してはとことん集中してのめり込めるのだそう。今井氏も「主体的に働きかけて疑問に思ったことや、知りたいと思って調べたり聞いたりして発見したことは確実に残る」と述べています。
(後略)
紀伊谷高那