人口87万減なのに「世帯227万増」

元々は村落共同体だった日本社会が、農村から都市へ、高度経済成長、核家族化を経て、人との関係性がどんどん希薄になっている。そして、今、人口は減っているのに世帯は増えているという状況にある。今後の社会の在り方を見直す重要なデータだと感じる。

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〇ソロ世帯が多い年代は20代と60代
ソロ世帯の増加というと、若者の一人暮らしが増加したかのように思いがちですが、それだけではなく、配偶者との死別による高齢ソロ世帯も増えています。若いソロ世帯が増えているのか、高齢ソロ世帯が増えているのかまでの詳細は、今後、年齢別、配偶関係別、世帯類型別の集計結果によって詳細は明らかになると思いますが、2015年時点での実績でもある程度予測はできます。
全国的にみれば、ソロ世帯が多い年代は、20代と60代というふたつの山に分かれます。若い未婚ソロと配偶者との死別後独身となった高齢ソロという二極化です。
しかし、都道府県のなかで人口が最も増えている東京と人口が最も減っている秋田とで比較をするとその分布が正反対となります。東京は完全に20代のソロ世帯、秋田は高齢ソロ世帯が多くなっており、50~54歳を分岐としてきれいに分かれています。
そして、若いソロ世帯が増加している東京などの都心エリアは人口が増加し、高齢ソロ世帯が増えている秋田などの地方エリアは人口減少しているという強い相関があります。これは、同じソロ世帯の増加でも、若者か高齢者かによって、そのエリアの成長と衰退とが正反対になるわけです。
基本的に、地域ごとの人口増減は、出生と死亡という自然増減要素に加えて、他からの転入転出という社会増減要素によって成り立っています。
2020年の国勢調査速報値に戻れば、5年前より人口が増えたところは、9都府県あります。内訳は、首都圏一都三県と大阪、愛知、福岡、滋賀、沖縄となります。このうち、沖縄だけが唯一死亡より出生の多い自然増の地域となりますが、圧倒的に人口増加がトップなのは東京です。東京だけでも55万人の増加ですが、一都三県合計では80万人も増えています。これは、全国の減少分をほぼ首都圏が吸収していることになります。
一方で、人口減少の激しい地域ワースト3は、秋田、岩手、青森とすべて東北勢でした。秋田に至っては、2015~2019年の累積死亡率もワースト、同出生率もワーストです。若いソロ世帯の多い「若ソロ地域」は人口が増え、高齢ソロ世帯の多い「老ソロ地域」は人口が減るということです。

〇「多死社会」突入の日本で人口減は当然
もう間もなく日本は年間150万人以上の死亡者が50年間継続する「多死社会」に突入します。出生数の倍以上毎年死亡者が出るわけですから、人口減少するのは当然です。そして、秋田のような老ソロ地域からそれは進行していきます。
東京など大都市だけが人口増加しているのは、転入超過によるものです。コロナ禍で東京への人口集中が止まったという報道もなされていますが、現実東京を含む首都圏集中は変わりません。
人口移動は基本的に若者だけの現象です。進学や就職を機に移動する20代の若者が人口移動の中心で、それ以外の年代の移動は微々たるものです。つまり、日本全体の人口は減少しているのに、首都圏だけが人口増加しているのは、若者の移動によるものです。
一都三県を年代別にみれば、そのほとんどが20代によって占められていることがわかります。特に、東京と神奈川に顕著です。反対に、秋田県は転出超過のほんどが20代を中心とした若者層の転出です。一都三県と秋田とでは見事なくらい鏡のような対称性を描いています。
若者が地方を脱出する理由は、そこに仕事がないからです。歴史的に見ても、都市への人口集中はそこに仕事があるかどうかで決定されてきました。
明治の廃藩置県後、全国で人口1位になった都市は広島県(1872年)です。続いて、愛知県(1873年新潟県(1874年)、石川県(1877年)と目まぐるしく入れ替わります。新潟は、その後1887年から1896年まで10年連続で1位に君臨し続けます。明治期において、人口集中都市は新潟だったわけですね。

〇新潟が1位だった理由
新潟が1位だった理由は、当時海運業が全盛期だったからです。高速道路網も鉄道網もまだ整備されていない時代、物流はほぼ船でやりとりされていました。海運業が盛んだったということは、そこに仕事がたくさんあるわけです。すると、若者が大勢集まります。若者が集まれば、彼らを客にしようと商売人も集まり、さらに人口が集中します。

もうひとつ、興味深いのは、人口増減と婚姻との相関です。2015年からの5年間の人口増減比とこの期間の累積婚姻率とを並べてみると、実に0.9183と非常に強い相関がみられました。要するに、婚姻数の多さと人口増加が大きく関連しているということです。事実、人口が増えた9都府県のうち、6エリアの累積婚姻率は全国平均を上回ります。最も人口減少している秋田県の婚姻率は最下位です。
だからといって、婚姻支援をすれば若者が集まるわけではありません。結婚を増やせば人口が増えるという因果ではなく、若者が多く移動してくる場所だからこそ、その結果として婚姻が多く発生していると見た方がいいでしょう。
しかも、都市の婚姻率が高いといってもあくまで相対的なものであり、日本全体の婚姻数は激減しています。これは、地方では今以上にますます結婚できなくなるということを示唆します。
子育てのしやすい環境をうたって、30代夫婦を呼び込むという政策を行う地方の自治体もあります。そのやり方自体は間違ってはいません。市町村別の人口増加ランキングを見ても、ベスト10には、さいたま市流山市川口市など郊外の都市が名を連ねています。
これも、東京で結婚した若いカップルが、妊娠や出産というライフステージの変化にあわせて、埼玉や千葉など土地代の安いエリアに、家を建てたり、転居したりすることによります。しかし、それが奏功するのは、あくまで仕事のある大都市かその周辺であるという前提条件がある場合のみです。
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蔵端敏博