子どもの弱点が「親の思い込み」かもしれない理由

子どもの能力は意外なところで伸びている
雨の日に外を歩いていて、母親と子どもが手をつないで歩いているのを見かけました。やがて、子どもは母親から手を離しました。何をするのかなと思っていると、しばらく先にある水たまりに入っていったのです。

「もう、何してるの?濡れるじゃない!」

注意したときには、すでに子どもは水たまりを通過しています。母親からすると、洗濯物が増えるのを避けたいところでしょう。一方、子どもからすると、

「あっ、水たまりだ。面白そうだな」

●好奇心からついつい入ってしまったのです。

母親としては、水たまりを見つけたらちゃんと迂回し、濡れないようにする子をよしとしたいものでしょう。でも、私の考えは少し違います。濡れないようにしてほしいというのは親の都合で、子どもには水たまりが濡れる危険性のある対象ではないからです。言うなれば、遊園地のジェットコースターのようなものでしょう。

「ちょっと怖いけど、試してみたい」

そんな心情でしょうか。もしかしたら深いと思われるところに足を踏み入れるのは、チャレンジ精神につながると考えます。

チャレンジすることとは、リスクがあっても向かって行ったり、時に立ち止まったりすることです。そんなとき、子どもの心の中は冒険心で満ちあふれていることでしょう。

子どもは遠回りし、一見非効率なことに熱中し、大人からしたらどうでもいいことにこだわるものです。大切なことは、洗濯などあとの面倒くささや効率を重視しない姿勢です。

多くの母親と接していると、育てにくさに困っているという話をよく耳にします。

「先生。あんまり勉強しないからって、いい加減にちゃんとやるように言うと、“今やろうと思ってたのに、言われてやる気がなくなった”となり、反対に黙ったまま様子を見ていても一向に机に向かう様子がありません。言ってもダメ、言わなくてもダメなので、いったい私はどうすればいいのでしょうか?」


●手のかからない子のほうが将来が心配な可能性もある
なるほど、切実な問題です。子どもというのは、母親とは別人格ですから、何を考えているのか理解するのも一苦労でしょう。

ただ、ここで確認しておきたいのは、その育てにくさが誰にとってなのかという問題です。周りにいるみんなが指摘するなら改善の必要がありそうですが、母親にとってだけの感覚であれば、それは思い込みである可能性も否定できません。子どもに対する評価は担任によってもまったく違うのです。ある担任が、

「この子は私が何か言うといつも反論ばかりして、揚げ足取りの名人です」

と言っていたかと思うと、新年度になって別の担任に替わり、

「あの子の感覚は面白いですね。私とは別の角度から物を見ることができるので、話していてとても楽しい子です」

と言われることもあるのです。リーダーシップに関するとらえ方もまったく異なるときがあります。ある担任が、

「この子は誠実で、みんなをまとめるのが上手よ」 

クラスでいちばんのリーダーとして推していた子を、次の担任が、

「周りの目を気にしていて、優柔不断なところが気になるけど……」

逆に配慮が必要な子として見ることもあるのです。もちろんその反対もあります。

「あの子は落ち着きがなくて困る」

と悪評を伝えられた子が、その後クラスに活気をもたらすピカイチのリーダーになったなんて話を耳にしたこともあります。


大切なのは、自分にとってどうかではなく、仲間を困らせていないか、その子がこれからの時代や社会に順応して生きていけるかといった点から見ていくことです。そうすると、弱点は時に長所に見えてくるはずです。もっと言えば、手がかからない子のほうが心配かもしれません。誰にも注意されず、今までの生き方を振り返ることもなければ、現状に甘んじてしまうかもしれないからです。

「ちょっと待てよ。僕はこのままでいいのか……?」

「なぜ私は注意されるのだろう?」

自問自答する経験は必要なはずです。それなのに、多くの母親が手のかからない子を求めているのです。

誰だって隣の芝生が青く見えるものです。頭がよくて、親の言うことを何でもちゃんと聞いて、どの先生からも怒られたことなどなくて、何か悪いことをしたとしてもすぐに反省できて……。クラスで評判の〇〇さんは、きっとそのように映っていることでしょう。

でも、本当にその子は大きくなっても困らない人生を歩んでいけるのでしょうか。社会に出たときに必要な力として、学業成績、規律性などが不可欠だと言われることはありません。大切なのは、コミュニケーション能力、主体性、チャレンジ精神、ストレス耐性などです。さほど重要でない力を理想像とし、そこにこだわるのは時間も労力ももったいないことです。

「まあ、この程度ならよしとしないと……」

くらいにとらえておけば、育てにくさも許容範囲に含まれることでしょう。そうした発想の転換こそ、親子共に幸せになる秘訣だと思っています。

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匿名希望