山村留学の変化~親子で一緒に農村へ移住する「親子型」が主流になりつつある

自然豊かな山村で子供たちが数年をすごす「山村留学」という制度がある。

例えば、そのひとつ、長野県阿智村の「なみあい育遊会」の事業趣旨には
「山間僻地において、残されているものは豊かな自然と心温まるコミュニティで。これこそが教育、子育てにもっとも重要なものであり、この環境と教育とリンクさせることに、わが国の教育問題改善の大いなる可能性があるように思う。その活用は教育問題改善への光になるとともに、地域づくりに貢献するものとなろう。」
「また、ともすれば「ADHDやLDなどの障害を持ったこどもたち」や「不登校のこどもたち」の受け皿として認識されがちな山村留学や自然体験キャンプであるが、実はこどものオールラウンドな発育促進を期待できるものであり、地域の教育資源との共同や適切な教育方針、技術によりその可能性は大きく膨らむことが予想できるのである。」
と、教育面と地域づくりの面での可能性に触れられている。特に教育面では、より能力の高い「時代を担うスゴい人材の育成」を目指している。

事業の中核にある「通年山村留学」では、専用の寮に仲間やスタッフと起居し、地元の学校(阿智村立浪合小学校・阿智中学校)に通いながら、自然体験、共同生活体験する。

山村留学は従来、「なみあい育遊会」のように、子供が、親元を離れて一定期間過ごす形態の事例が多かったが、ここ数年で「親子型」と呼ばれる形態が増えているという。

子育ての問題として、虐待や育児放棄などが取り上げられることが目立つが、より広範にみられる問題として「親の子供への異常な付きまとい・支配」がある。あまり認識されていないが、実はこの「付きまとい・支配」の方がより重要な問題と考える。
それを考えると、親元を離れて子供だけで共同生活や自然の中で過ごすことが、子供の成長のポイントであるようにも思う。
しかし一方で、親もまた、子育てに苦悩し、不安を抱え、だからこそ「付きまとい・支配」する構造があるとすれば、親も含めて、子育ての苦悩から解放される可能性として、親も一緒に農村へ移り住む「親子型」も可能性があるかもしれない。家族(生殖集団)や子育ての在り方を捉えなおしていく方策として、「親子型」の可能性も継続して追求してみたい。


日本農業新聞(2021年6月10日)の記事より引用です。

農村や離島の公立小中学校で学ぶ「山村留学」に新しい潮流が生まれている。2005年前後の「平成の大合併」をピークに減少していた留学生が、5年前から増加に転じ、新型コロナウイルス下の21年度は主に母親と来る「親子式」が過去最多となる見通しだ。子育て世代のライフスタイルの変化が背景にあるとみられ、地元の子どもだけでは学校を存続できない地域や自治体が生き残りを懸けて受け入れを模索している。
全国の実態調査を続けるNPO法人「全国山村留学協会」(東京)による最新の20年度調査を基に、日本農業新聞が6月、山村留学制度のある70市町村に21年度の受け入れ状況を取材した。

■移住の”お試し期間”
 それによると、山村留学生の数は20年度から微増の計670人だったが、うち「親子式」は過去最多タイだった20年度の246人から10%増えて269人となり、親元を離れて学ぶ「里親式」や「全寮式」の減少分を補う形となった。「親子式」は親も来るため移住につながりやすく、複数の自治体が“移住のお試し期間”と位置付けたり、1人親の家庭も「親子式」で受け入れたりしている。

 留学生は東京や大阪など大都市圏からが大半で、同じ県内からの留学もある。留学先は鹿児島、山梨、北海道などの順に多い。

 留学生100人超が学ぶ鹿児島県は、5年間に受け入れ校数が16市町村60校と1・5倍に増えた。屋久島町は「親子式」が17人増の28人と過去最多となった一方、子どもだけの留学は6人と半減。南種子町も留学生46人のうち「親子式」が子どもだけの留学数と並んだ。

■「親子式」だけの町村も
 山梨県では、早川町丹波山村小菅村の3町村が「親子式」だけ受け入れており、小中学校が各1校の2村では留学生が全生徒の半数を超えている。長崎県五島市も一部の小学校で在校生全員が留学生となっていた。

 一方、全ての方式がある北海道鹿追町は、瓜幕地区で11人増の25人と留学生数が過去最多となり、「親子式」が初めて過半数を占めた。制度導入から28年間に留学関係者120人が移住し、留学センターが中心となって留学生や親たちのサポート態勢を整えている。

 コロナ禍が起きた20年以降、都市から地方へ生活拠点を移す「田園回帰」やリモートワークの普及などが追い風となり、各自治体に「親子式」の問い合わせや申し込みが増えていた。一方、「親子式」は世帯ごとの住宅が不可欠で、「住める家が少なく断らざるを得ない」(高知県馬路村)ケースが多く、大きな悩みとなっている。

<ことば> 山村留学
 公益財団法人「育てる会」が1976年、長野県八坂村(現大町市)で始めた全寮式から全国の市町村に広がった制度。他に里親式や親子式があり、組み合わせは自治体によってまちまちだ。親子式は、両親と来れば移住となるため、仕事がある父親は自宅に残り、母親と来るケースがほとんど。

 

 

 

小川泰文