「会社で子育てを!」、旭山動物園園長の提言

動物の適応戦略を観察してきた方の意見。なるほどです。
特に哺乳類の適応戦略、子育ての仕組みから人間が学び直すことは多そうです。
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「会社で子育てを!」、旭山動物園園長の提言
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血縁関係を軸に、生活の基盤を共有する家族制度を、日本人は長い歴史を通じて保持してきた。だが、時代の趨勢とともに、その仕組みに綻びが出始めている。なぜ人間の家族は壊れてしまったのか。これまであらゆる動物とのかかわりを通じて人間社会を見つめてきた、旭山動物園園長の坂東元氏に聞いた。

やっぱり、人間ってすごく特殊な生き物ですよね。自分を変えない。つまり、周りの環境を変える、作り変えるということをずっと続けて生きてきた。例えば南極のような人間が住めない場所でも資材や食料を持ち込み、太陽熱暖房なんか作っちゃったりして住んでしまう。姿かたちは変えずに、いろんな技術やモノを使って環境を自分たちに合わせようとする。その発想というか、思考回路が動物と根本的に違いますよね。だから、自分たちが今与えられている環境の一部として「生きる」感覚がないんです。もちろん、太古の昔、今のような技術がない頃は、環境とともに生きるということがあったのかもしれないけど。環境を変え続けてきた結果、「生きる」という感覚がどんどん生物本来のものからかい離してしまっていると思います。動物にとって「生きる」とは、食べることそのものです。自分が生きるためには誰かを食べなきゃならない。その食べる生き物も誰かを食べなきゃならない。(中略)

家族というのも、そもそもは動物が過酷な自然環境の中で生き残るための1つの共同体、ユニットでした。時代の移り変わりとともに、その形態は変わってきたはずです。人間だってこういう一夫一婦になったのはほんの数千年、数百年前の話です。今だって場所によってはハーレム型のところなど、一部ありますからね。しかし、どの動物もそうなんですけど、基本的には生まれた子供の生存確率を高めるために、共同体や社会が作られるものなんです。大人のために作っているんじゃないんですね。まず子供の生存率をいかに高めるかが前提にあって、その上にいろんな社会、いろんな生き方が構築される。これが本来あるべき社会の姿です。だって、自分だけ生きて、自分だけ幸せになろうとして、命がつながらなかったら、その生物は絶滅してしまうでしょう。(中略)

人間に近い霊長類のオランウータンは雌単独で子育てをします。これは近くで見ていても本当に強い。たくましいなと思います。人間はそこまで強くない。サルやチンパンジーのように、子育てにちょっと疲れたら隣のサルに預ける、みたいな集団やコミュニティーの中でないとやっていけないと思います。ところが今はそれがない。その結果、子どもたちは自分が大きくなるまでに、自分の両親や学校の先生くらいしか大人を知らないで育ってしまう。子供の未来にとって、これってすごく不利益でかわいそうなことだと思います。親からものすごく影響を受けてしまうから。「うちのお母ちゃん、ちょっと普通の大人と違うなぁ」とか客観的に思うきっかけすらありません。親と子が異常なまでに一体化してしまうという問題も起こってきます。(中略)

極端な話、会社をもっとうまく使えばいいんじゃないかなと思っています。会社は、地域社会とは違ってまだ組織としてのコミュニティーが機能しています。働く女性が子供をおんぶして出社してきたら、10分ずつ交代で周囲の男性社員に子守をさせるとか、そういうのがあってもいいのではないでしょうか。だって、8時間なり9時間、1分も休まずに働いている人なんていないでしょう。皆で子守をしながら働く会社があってもいいはずです。このアイディアは実現できると思いますよ。子供がいろんなタイプの大人と触れ合えるメリットもありますし、働いている側もギスギスしないのではないですか。今、自分がいる地域の中やマンションの中で、コミュニティーを作り直しましょうなんて、無理でしょう。だったら、まだコミュニティーが残っている会社の方がいい。価値観を変える余地はあると思います。人間は一人で全部完結できるほど、強い生き物ではありません。特に子育てというのは、何か支えがあってというか、いろんなかかわりがある中ではじめてできることだと思います。それにきっと、人と様々なかかわりを持つ過程で自分にとって関係ないものや、共存できない存在も出てくるでしょう。それに価値を見出したり、認め合う感性を育むことが、「個の時代」から抜け出すために必要不可欠な要素です。今の社会は、どんどんお互いを認め合えなくなってきている。(中略)
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(匿名希望)