スキンシップによる皮膚への刺激が、こどもの関係力に大きく影響する。
こどものころの母親とのスキンシップがその後の成長に大きく影響するとのこと。スキンシップによるオキシトシンの分泌によって、挑戦する意欲や、集中力、関係力の高いこどもになるといわれている。
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皮膚は「露出した脳」!?
みなさんは、子どもの頃に親から抱きしめられたり、頭をなでられたりしたことを覚えていますか? あまり覚えていないという人も多いかもしれません。ですが、肌に触れられた記憶というものは、私たちが思っている以上にしっかりと脳や心に刻み込まれているようです。
桜美林大学リベラルアーツ学群教授で臨床発達心理士の山口創先生は、著書『子供の「脳」は肌にある』(光文社新書)のなかで、「幼いころの肌の接触は、単に見たり読んだりした経験に比べると、その後の人生にとってははるかに大きな意味をもつ。そして、知らず知らずのうちに、私たちの生き方や人間関係に大きな影響を与えているのである」と述べています。
山口先生は「皮膚は『露出した脳』であり、皮膚に直接刺激を与えることで脳が育つ」と言います。なぜ「露出した脳」なのかというと、皮膚と脳は同じ「外胚葉(がいはいよう)」という細胞からつくられているそう。そのため皮膚からの情報は、視覚情報や聴覚情報とは違い、ダイレクトに脳へと伝わり、脳を大いに刺激することがわかっているのです。
そして重要なのが、一見「脳」からかけ離れている「肌」という体の末端部への快い刺激こそが、子どもたちの心を豊かに育むことにつながっているということ。山口先生は、親との触れ合い経験が不足している子どもは、愛情の形成が不十分になり、のちに人間関係にさまざまな問題が出てくると指摘します。
例えば、幼児期に母親から添い寝などを通じて肌にたくさん触れられて育った子どもは、成長してからも情緒が安定しており、社交性が高く、他人を攻撃する傾向も低い。反対に母親とのスキンシップが少なかった子どもは、人間不信や自閉的傾向が高く、自尊感情も低いことなどがわかりました。
このように、肌の触れ合いは、子どもたちの人生に大きな影響を与えるのです。
愛情ホルモン「オキシトシン」のすごい効果
なぜ肌に触れることで子どもの心が満たされるのでしょうか? それには、「愛情ホルモン」と呼ばれる「オキシトシン」が大きく関わっています。
先ほどもお伝えしたように、じつは密接につながっている皮膚と脳。人間の脳はスキンシップにより、いわゆる「愛情ホルモン」と呼ばれる神経伝達物質・オキシトシンを分泌する働きがあります。このオキシトシンこそが、ストレスへの反応を和らげたり、他人への信頼を強めたり、安心感をもたらして幸せを感じさせたりする効果を生み出すのです。
では、親子のスキンシップによってオキシトシンが分泌されると、具体的にどのような効果が表れるのでしょうか。
■オキシトシン効果1:挑戦する力が育つ
普段からスキンシップをしているということは、親子関係が安定している証拠。それゆえに子どもの心は常に落ち着いており、新しいことに挑戦しようという気持ちの余裕がもてるようになります。また、オキシトシン効果で不安な気持ちを抱え込みにくくなり、なんにでも臆することなくチャレンジできるように。
■オキシトシン効果2:集中力が高まる
不安や心配事に心がとらわれていると、集中力が下がるのは周知のとおり。日常的に触れ合うことによってオキシトシンが出やすくなると、心身のリラックス効果がもたらされます。目の前のことに集中し、結果を出したいと思っているのなら、まずはスキンシップを!
■オキシトシン効果3:コミュニケーション能力がアップする
オキシトシンは人を信頼し、人との絆を強める働きをしてくれるホルモンでもあります。「友だちとうまく遊べない」「衝動的になることが多くトラブルを起こしやすい」という悩みを抱えている子の多くは、家で親に甘えられなかったり、スキンシップが極端に少なかったりする傾向があるそうです。
東京慈恵会医科大学名誉教授の前川喜平先生は、「身体的接触は、安心感と親密さを増し、信頼関係を築きやすくなる」と述べています。実際に、スウェーデンの保育園や学校で子どもたちにマッサージを受けてもらったところ、落ち着きが出て、他者との関わり方が穏やかになっていったそう。なかでも、乱暴な言動で困らせていた男の子は、タッチケアによって攻撃的な振る舞いが減少したと言います。
また、乳幼児期に母親とのスキンシップが不足していた子どもは、高校生になったときに衝動的に他者を攻撃する、すなわち「キレやすい」傾向があることも判明。それは「皮膚レベルの欲求が満たされていない」ことが原因であり、「皮膚の欲求不満が、生まれてからずっと続いていたに違いない」と山口先生は指摘しています。
スキンシップを増やして不満を解消することで、問題行動が軽減された実例もたくさんあることから、子どもの心の問題は親とのスキンシップと密接に関わっていることがうかがえるでしょう。
(真田俊彦)