~うわさのズッコケ株式会社~ 「行動すること=可能性を切り拓くこと」が如何に重要か?

ズッコケ三人組リンクという児童文学のシリーズがある。
どの巻も「子どもの読み物だから」という枠を超え、現実社会の課題を受け止め、どのように突破していくかを自ら思考する内容になっている。
その中でも『うわさのズッコケ株式会社』は白眉。社会の欠乏を探索するアンテナ、それに応える現実的な手法に加え、「行動すること=可能性を切り拓くこと」が如何に重要かを教えてくれている。


《以下引用》リンク

 釣り客で賑わう港で弁当やジュースを歩き売りすれば商売になるんじゃないか、と考えついた主人公の小学生3人組が、最初は自分たちのお小遣いから、そのうちにクラスの友人たちから出資金を集め、弁当販売の株式会社をつくり、事業を拡大していく…というストーリーです。

 主人公たち3人組-”社長”のハチベエ、”経理部長”のハカセ、”営業部長”のモーちゃんは、ごっご遊びではなく、本当にクラスメイトたちに株券を発行し、株式会社を設立してしまいます。家にある年賀状のプリント機で1枚100円の株券を300枚刷り、放課後の教室でクラスメイトを集めて株主総会を開き、商店街のスーパーで特売品のインタントラーメンを大量に仕入れ・・・と、小学生らしい世界観の中で、彼らは本気で商売をし、額に汗しながら会社を経営していきます。

 起業アイディアを形にするプロセス、資金集め、収支計算、株式発行と配当金、売掛金の回収、売上拡大のための設備投資、既存マーケットの衰退と新規事業への挑戦(釣りシーズンの終わりとともに、当初の弁当販売は立ちゆかなくなり、大量の不良在庫となったインスタントラーメンを売りさばくため、主人公たちは新しい場所で新しいビジネスに挑戦します)など、荒唐無稽な児童書ながら、その中にはビジネスの基本要素が凝縮されています。「資本金」「売上」「利益」といった文中に出てくる大人の世界の言葉にワクワクし、利益を出すために懸命に奔走する主人公たちに感情移入しながら、どんな冒険小説よりも面白い!と夢中で読んだ子供の頃を思い出しました。

 単に株式会社というシステムを学ぶための 「児童向け株式の仕組み入門」ではないところに、この作品の面白さがあるのでしょう。なかなか回収できない売掛金1,280円のために奔走するハチベエ株主総会で、クラスメイトたちに次々とシビアな質問を浴びせられるハカセ。不良在庫となった300杯のラーメンに追いかけられる悪夢を見てしまうモーちゃん。様々な困難に悩み、行動する主人公たちの姿は、お金を稼ぐことの大変さや、一筋縄ではいかないビジネスの厳しさの一端を伝えています。

              (中略)


 当時の私は、ハチベエたちがつくったHOYHOY(ホイホイ)商事株式会社の4人目の社員になったつもりで、300杯のラーメンをどう売るかを真剣に考えました。クラスの友達と「私ならこう…」「僕ならまず…」と、想像の世界で話し合うのが楽しく、遊び感覚の中から、教科書には載っていない何かを学んでいたのだと思います。

 この物語はビジネスの大変さを伝えると同時に、お金ではない、働くことで得られる充実感、喜びも教えてくれます。かつて何気なく読んでいたこれらの台詞たちには、仕事明けに飲むビールの、ほろ苦い美味しさが理解できるようになった今だからこそ、感じるものがあります。

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午後二時半、380円のおにぎりべんとうは、きれいさっぱりなくなってしまったし、クーラーボックスのなかも、とけた氷水だけになった。
「やったな。」
ハチベエが、会心のVサインをしてみせる。
「ぼく、おなかぺこぺこ・・・・・・。でも良かったねえ。みんな売れちゃって。」
モーちゃんが、おなかをさすりながらいえば、ハカセも、
「まずは、順調なすべりだしじゃないの。けっこう重労働だったけどね。」
と、めがねの顔をほころばせた。

三時前、ついにさいごのラーメンが売れた。ハチベエが、ほいほい亭ののれんをおろす。
「やったね。社長さん。」信彦が、ハチベエに握手をもとめた。
「みんなのおかげさ。」きょうのハチベエは、えらくけんきょだ。

なんだか、すかっとした気分だった。自分のふところに、いくらはいるかなんてことは、もう、どうでもいいような気がした。それよりなにより、とにかく、株主連中に、わが経営の才能をみとめさせたことのほうが、よほど気持ちよかった。
「なあモーちゃん。おれ、もしかしたら、ほんものの社長になれるかもなぁ。」

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 大人になった私たちは、ビジネスに必要な多くの要素を、自分の力で手に入れることができます。
足りない物は、買えばいい。
買うお金がなければ、稼げばいい。
稼ぐ知識がなければ、学べばいい。
学びを活かせるだけの経験がなければ、積めばいい。
それでも足りなければ、出来る人の力を借りればいい。
 多くを手に入れられる自由がありながら、私たちはつい「現実的じゃない」「この状況では無理だ」と理由をつけて、行動を起こすことを止めてしまいます。ハチベエたちは、ためらいません。思いついたら即、アクションを起こします。

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父さんや母さんに融資をことわられたのはショックだったが、これでポシャるようなハチベエではなかった。よく日学校に到着すると、さっそくクラスの友人に声をかけて、事業資金の借り入れをもうしこんだのである。
「とにかくすごい人手なんだよな。千人、いいや二千人はいるんじゃないかなぁ。あれだけの人数がいれば、ぜったい売れると思うぜ。」(中略)
こんな調子でしつこくたのみこんだ結果、なんとかその日の放課後までに6,000円の融資をうけられることになった。ハチベエの情熱には、ハカセもモーちゃんも、すこしばかりおどろいてしまった。

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今の私たちがハチベエたちに学ぶべき事、それは、思い描いたことを形にする、行動力なのかもしれません。

《引用以上》

 

(洞口海人)