日本の入試における、英語力を伸ばす好事例集。

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 この好事例集は、大学入学共通テストへの英語民間試験の活用と記述式問題の導入が見送られたことを受け、高大接続や大学入試改革の在り方を議論した「大学入試のあり方に関する検討会議」が昨年7月に行った提言に基づいてまとめられた。提言では、高大接続を踏まえた今後の大学入試改革について「他大学の模範となる先導的な取り組みを推進することが重要であり、ペナルティを課すという方法ではなく、積極的な取り組みを促進・評価する観点から、推進策を講じる必要がある」と指摘し、客観的なデータを踏まえた好事例の認定と公表を求めた。

これを受けて、文科省では昨年10月に好事例の選定委員会を設置。全国の国公私立大学と短大を対象に好事例を募集したところ、計84件の申請があった。「総合的な英語力の評価・育成」「思考力・判断力・表現力の評価・育成」「多様な背景を持った学生の受入れへの配慮」「高校との連携をはじめとする高大接続改革の推進」「文理融合の推進やその他の好事例」という5つの区分で選定作業を行い、18件を好事例として選んだ。

 英語4技能をにらんだ総合的な英語力の評価・育成では、小樽商科大学東京外国語大学東洋大学京都工芸繊維大学の4件が好事例とされた。

 小樽商科大学商学部の総合型選抜で募集人員20人を対象に、第1次選抜では英語で作成した志望理由書や学習計画書、民間英語試験の成績などを審査し、第2次選抜では、英語を主体としたグループディスカッションや口頭試問を行う。選定委員会は「英語4技能のうち『書く』『話す(やりとり)』『聞く』の評価に工夫がある」「入学前のギャップイヤープログラムの導入は先進性があり、入学後のグローカルコースでの学びと連続性がある」などと評価した。

 東京外国語大学は、国際日本学部の一般選抜で募集人員35人を対象に、学力検査の外国語に「英語スピーキング試験」を導入。試験問題の作成は同学が、採点はブリティッシュ・カウンシルが行うほか、スピーキング力単独の測定テストとして、他大学でも利用できる汎用(はんよう)的なテストフォーマットを採用していることが特徴となっている。選定委員会は「先進性があり、波及効果は高い」「ウェブサイトなどにおいてその概要を予め提示するなど、きめの細かい対応が評価できる。スピーキングテストの概要やレベル別の対策のポイントなどを掲載している点も参考になる」「外部試験でなく、外部の力を借りての共同開発で筆記テストでは測りにくい力を評価しようとしているのは、他校の参考にもなる」と、高く評価している。

 東洋大学は、全13学部で行われる前期日程の一般選抜で募集人員3244人を対象に、英語民間試験を利用できる制度を導入した。一般選抜における英語科目を受験せずに、英語民間試験(英検、GTEC、TEAP、IELTS)のスコアを、英語科目の得点として換算できるようにしたことが制度設計のポイントとなっている。経済的事情に配慮し、英語民間試験のスコアを活用する場合は入学検定料を約43%減額する措置もとった。選定委員会は「検定料減額については、大学自体に4技能を評価する手立てや予算がなくとも、工夫次第で高校生の学びを変えることができることを示している」と好事例に挙げた理由を説明し、英語民間試験を個別入試に活用する際には、受験生の経済的な事情への配慮が望ましいことを示唆した。

 京都工芸繊維大学は工芸科学部の総合選抜で、募集人員80人のうち一般プログラムの募集区分「グローバル」で、大学独自で開発したCBTシステムを用いた英語スピーキングテストを課している。英語スピーキングテストの実施体制は、英語担当教員を中心に、課題作成5人、点検担当者2人、採点担当者7人、試験監督者4人。選定委員会は「CBT方式による英語スピーキングテストを行うなど、英語4技能を総合的に評価する選抜を行っており、大変意欲的な入試制度である」と評価する一方、「CBT導入はかなり難易度が高いため、他大学では容易に導入できない可能性も懸念される」とも指摘した。

 好事例に添えられた選定委員会のコメントを読むと、多くの大学が英語4技能の評価を個別試験に取り入れるためには、東京外国語大学が先駆けとなっているように、出題は大学が独自に行い、採点には外部の力を借りながら、汎用的なテストフォーマットを活用して英語4技能試験を実施するか、あるいは東洋大学のように経済的な事情のある受験生に配慮しながら英語民間試験の活用を図るか、が現実的な選択肢として評価されていることが分かる。こうした現状を踏まえ、文科省では、8月8日に公表したアクションプラン「英語教育・日本人の対外発信力の改善に向けて」の中で、来年度予算の概算要求に私学助成や国立大学運営費交付金によるインセンティブの付与を盛り込む方針を示しており、各大学に取り組みを求める姿勢をとっている。

 一方、高校の学習指導要領が目指す「思考力・判断力・表現力」を評価・育成する大学入学者選抜の好事例では、長崎大学など7大学が挙げられている。長崎大学では、高校や教育委員会と共同で作問した「高度な記述式問題」を全学部の一般選抜の前期日程で、共通科目の英語・数学・理科(物理、化学、生物、地学)に導入した。選定委員会は「高校・教育委員会と連携して『高度な記述式問題に関する研究を行う検討会』を設置し、共同で作問研究を行う興味深い取り組み」「『サンプル問題』と『解答例・解説』が公開されており、大学が思考力・判断力・表現力を具体的にどのように測定しようとしているかが受験生に示されているので、そのような問題を解ける能力を身に付けるような学習を促すことにつながる」などと評価した。

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(宮崎翔平)