「自分で考える子」を育てた親のある共通点①

これまでの経験から、いわゆる「できる子」にはある特徴が備わっているように思います。それは、自ら進んで学んでいく能動的姿勢と、基本や本質から物事を考える姿勢が身に付いているということです。

●「右とは何か?」と問われて、なんと答える?
突然ですが、「右とは何か」と問われたら、皆さんはどのようにお答えになりますか。

一見、簡単なようですが、急に聞かれたら多くの人が答えに窮してしまうはずです。「一般に人が食事の時にはしを持つ側」とか「一般に心臓がない側」という回答をされる方がいます。もちろんこれは、悪い答えではありません。しかし、この答えには普遍性がありません。左利きの人や心臓が右側にある人もおられるからです。

こうした問題を自らの視点で本質から考える子どもがいます。言い換えれば、根底から物事の本質をとらえることができる子どもです。もちろん生まれながらにその種の能力を備えている子どももいるでしょう。けれども、皆が皆そういうわけではありません。親が子育てを工夫し、粘り強く接していると、そういう子どもに成長していくというのが私の実感であり、仮説です。

一例をご紹介しますと、以前こんな子どもがいました。「右とは何か」という問いに、多くの子どもがとまどいを見せる中で、「時計の文字盤で12を上にして、3時の方向」「数学の座標平面で、x軸の値が大きくなる方向」と答えたのです。もちろん、この答えも、時計の文字盤の並びや数学の座標の概念が衆知であるということが前提となりますが、なかなか良い視点です。この子どもをつぶさに観察すると、いつも何を考えるのにも、オリジナルな発想を持つ傾向がありました。家庭において“考える習慣”を身に付けさせたのだろうな、と思いました。

医学部受験の指導の現場で多くの子どもと接していると、これは、と思う子どもに出会うことがあります。以前、こんな出来事がありました。

●3人の子をスタンフォードに入れた母の子育てとは?
「オペロン説」という分子生物学の分野の話をしていた時のことです。「大腸菌は、普段はグルコースブドウ糖)をエネルギー源として用いている。そのため、ラクトース(乳糖のこと。乳糖分解酵素グルコースガラクトースに分解される)を与えても、すぐには利用できない。しかし、栄養源をラクトースだけにして十数時間もすると、大腸菌はなぜかラクトースを分解する酵素を作るようになり、ラクトースを利用するようになる。グルコースがないのだから、必要に迫られてラクトースを使うわけだ。この事実は、環境の変化に対応して大腸菌の体の中で発現する遺伝子が調節されているということを示している。つまり、周囲の変化に適合するように大腸菌は生きているのだ。生物というものは実に効率の良いメカニズムで生きている。つまり目的に合った『合目的的行動』をとるのだ」と説明したのです。

すると私のこの説明に対して、ある生徒はこう言いました。「ああ、つまり生物はムダなことをしないということですか。生物の行動は、基本的に理由に裏付けられた行動なわけですね。生きる方向や生きる目的と整合して行動するのですね。ということは、今話された『合目的的行動』という観点で生物現象、生命現象を観察し、それにそぐわないおかしな現象を排除していけば、生物入試の考察問題の解答はおのずと絞られ、正解が導けますね」、と。なかなか、的を射た指摘だと思います。

                          ②へ続く・・・
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井垣義稀