なぜ 「うんこ」は子どもに人気なのか 漢字ドリルが260万部

「生まれて初めて親にドリルを買ってと言いました」(5年生男子)、「次にどんな例文がでてくるか楽しみで、1日に10ページやった時もあります」(6年生男子)
子供達が大好きな「うんこ」を盛り込むことで、子供達の内発的なやる気を引き出した(?)興味深い事例。ある意味「楽しんで勝つ」。また、友達と一緒に楽しめるのもポイントと思われる。
リンク より
********************************

うんこ漢字ドリル」が生まれるまで

「運動場にびっしりとうんこがしきつめられている」
「うんこをヘリコプターでつり上げて運ぶ」
これはいま話題の『うんこ漢字ドリル』3年生用漢字の「運」の例文だ。すべての例文に「うんこ」を使うという型破りなドリル。この無料体験イベントが5月13日、旭屋書店池袋店で開かれた。子どもたちはクスッと笑いつつも、みな真剣に漢字を書き込んでいた。

ひとつの漢字につき例文は3つずつ。画数で並べるより覚えやすさを優先し、舌と眼といった体の部位を並べて編集するなど、見せ方も研究した(撮影:岡本裕志)
その様子を楽しげに眺める男性がいた。同ドリルの例文作者・古屋雄作氏(40)である。
「いやー嬉しいです! 字がいいじゃないですか。けっして上手じゃないけど、力のある字で、マス目いっぱいに書いてくれている。この字がマス目に入ったのを見て、あ、これでドリルが完成したなって思いました。全国の子どもたちとコラボができたなって」
このドリルは、3月24日の発売からわずか2か月あまりで、発行部数がシリーズ合計266万部を超えた(6月16日現在)。版元は文響社(東京)。『人生はニャンとかなる! 』といった自己啓発本シリーズのヒットで知られる。同社の山本周嗣社長は、若い世代の成長を促す、たとえば教育関連の本もつくりたいと考えていた。そんなある日、中学からの友人である古屋さんがうんこを題材に川柳を作る趣味があったことを思いだした。「うんこをぶりぶり漏らします」「うんこをコロコロ丸めます」といったオノマトペを交えた川柳だ。
うんこと教育を合体させたら面白いに違いないと思った。直感だったが、漢字ドリルが頭に浮かんだ。うんこを使った漢字ドリルの例文作成の相談を受けた古屋さんは、3018もの例文をひねり出した。時に、「うんこの神様が憑依したようなトランス状態」になりながら、ひたすらパソコンに向かって書き続けたという。
しかし、例文はあくまで学習ドリル用である。内容に問題がないかを、学習参考書などを多く手がける会社にチェックしてもらった。「炎に限界まで近づいてうんこをする」には「危険」と注意されるなど、ダメだしも多数あった。複数の学習塾へ行き、先生や子どもにも意見を求めた。その一つ「こくご塾KURU」(東京都文京区)の西原真喜子塾長によれば、社長や編集者が、熱心にメモを取っていた真面目さが印象に残っているという。制作期間2年。ついに3月24日、店頭に並んだ。人気に火をつけたのは、先行発売直後にツイッターに投稿された一文だ。

発売されるや爆発的な売れ行き

「例文が全てうんこの漢字ドリルをみつけた」という内容のツイートで、例文を2つほど撮影した写真がアップされていたのだ。
書店の反応もよかった。JR山手線目黒駅の駅ビル・アトレに店を構える有隣堂では、平積みではなく棚に差した状態で目立たなかったはずなのだが、各学年5冊ずつが5日で完売。「ドリルの売れ方としては異例の速さ」(児童書担当・海東寛子さん)だったという。
前出の「こくご塾KURU」に通っている子どもたちも、「生まれて初めて親にドリルを買ってと言いました」(5年生男子)、「次にどんな例文がでてくるか楽しみで、1日に10ページやった時もあります」(6年生男子)と大好評だ。
山本社長はその勢いに「行ける」と直感。すぐさま10万部の増刷を指示。さらに増刷を重ね、発売からわずか2週間で目標値であった64万部近くまで到達した。64万とは、全国の小学生の数、約640万人の1割に相当する数だ。

<略>

幼児教育の専門家がうんこで笑う理由を分析

それにしても子どもはなぜ「うんこ」が好きなのだろう。幼児教育が専門の三重大学教育学部・富田昌平准教授に聞いた。富田准教授は、うんこ、おなら、おしりといった言葉に幼児が関心を示す理由や背景などを調べた論文「幼児の下品な笑いの発達」を執筆している。子どものうんこ好きについて次のように話す。
「硬い言葉で言えば、〈日常性からの逸脱〉というところにうんこ好きの理由があると思います。日々の何気ない日常の会話の中に、ひょいと〝うんこ〟という非日常性が投げ込まれる。すると、そこに笑いが爆発するのです。大人はすでにそうした笑いの構造を暗黙裡に理解しているから、くだらないなどと思って笑えませんけどね」
ただ、うんこへの反応も年齢とともに変わるという。最初は「うんこ」などと言うと親が慌てたりするので、それを面白がってわざと口にする。それも4歳ぐらいで終わり、うんこを言う対象が母親から友だちに移っていく。幼い頃は仲間と笑い合いたいけれど、表現などで笑いをとる技術がないので、手っ取り早く「うんこ!」と言ってみたりする。そのピークは4、5歳。幼稚園の年長ぐらいになると、笑いをとる技術が発達し、お下劣な言葉を使わなくても笑いをとれるようになっていく。

「お下劣笑い」に出る男女差

「小学生になると、下ネタの話題は恥ずかしいという感情も芽生えてくるんです。ただ男子は、小学4年生ぐらいまでは仲間うちで下ネタを話題として楽しむところがありますね」
富田准教授は、子どもの遊びや会話を観察する中で気づいたことがある。それは友だち関係をつくるときの男女差。女子は3、4歳頃から互いを「褒め合う」ことで、「私たち友だちだよね」という意識を高めるが、男子は違う。
「男子は『強さ』『かっこよさ』を志向するようになる一方で、『くだらなさ』を共有するところがある。ときには、『お前もやるな』『俺もたいがいだが、お前もくだらないな』などと、くだらなさを張り合ったりもする。男子はそういう過程の中で、友だちの絆を深めていくところがあります」


<略>

********************************
以上



蔦宇兵衛