子どもたちは学びながら「共感する力」を身につけた──「Make School」サマーアカデミーが残したもの

( リンク )より引用
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米西海岸発のプログラミングスクール「Make School」が東京で開催したサマーアカデミーの発表会が、このほど行われた。生徒たちがアカデミーで学んだ3週間の成果に、共同創設者ジェレミー・ロスマンのヴィジョンはどのように体現されていたのか。イヴェントの様子からは、生徒たちが得た「共感」というエネルギーの力が見えてきた。

米西海岸発のプログラミングスクール「Make School」のサマーアカデミー発表会が、このほどTechShop Tokyoで行われた。前回の記事では、共同創設者のジェレミー・ロスマンがMake Schoolを立ち上げた経緯について、「自分が受けたかった教育環境を提供したい」という思いから生まれたことを明かした。その思いは、東京で開催されたサマーアカデミーでは、どのようにしてかたちになったのか。

ロスマンが語ったように、このプログラミングスクールは「目的意識」を大切にしている。プログラミングによって創造する楽しさを実感しながら、それをかたちにする力を身につけること。それを自分の得意分野を組み合わせること。人々に本当に使ってもらえる、世のなかにインパクトを与えられるプロダクトをつくりだすこと。これらによって、生徒たちは自分なりに社会に貢献できるというわけだ。

■「コミュニティづくり」が生み出したエネルギー
こうした特徴は、Make Schoolの「コミュニティづくり」を通して実践されている。東京でのサマースクールの参加者は、小学6年生から大学生まで幅広い。公立や私立の学校だけでなく、インターナショナルスクールに通っている生徒もいる。このスクールのためにシンガポールや中国から訪れて、東京にひと夏滞在している子どもたちもいた。

誰もが主体的に参加しており、自分の考えをしっかりもっている様子だった。プログラミング経験や英語力もまちまちだが、誰もが違うことに興味をもっている。何かに“突き抜けて”いて、学ぶ意欲がさえあればいい。そんな雰囲気に満ちていた。

生徒たちは自分の興味が何であれ、将来の夢にプログラミングはつきものであると考えている点は共通していた。苦手な英語を克服したい、将来の選択肢を広げたいといった目標をもっているものの、最終目標は「プログラマーになるため」ではない。生徒たちは、プログラミングと自分の得意分野、すなわち将来の夢が必ずどこかで交差することを知っていたのだ。


こうした思いを抱きながら、生徒たちはMake Schoolで学び、最終的にはスマートフォンのアプリを完成させる。発表会では来場者が“作品”のアプリを自由に見て回り、気になった2つのアプリに投票できるシステムになっている。このためか、「クランチタイム」と呼ばれるスクールの最終週には、生徒たちは寝食を忘れる勢いでアプリ開発に打ち込んだという。

こうして迎えた発表会の当日。生徒たちの表情は生き生きとしており、クランチタイムによる疲れを感じさせなかった。

生徒たちは、どのようなアプリを発表したのか。中学3年のある男子生徒は、英語の音声を字幕に変えるアプリをつくった。その理由は、インストラクターが話すネイティヴの英語が速すぎて、聞き取れなかったからだ。アプリを起動してスマホに話しかけると、数秒後にそれが文字になって画面に出てくる。


生徒の母親によると、彼は小学校のときに何を勉強したらいいかわからず学校が嫌いになったそうだ。そんな時期に、FabLabに足を運び、大人たちと交流するうちにプログラミングを始めたのだという。プログラミングへの興味が生まれたことで、ほかの教科への意欲も自然に高まった。サマーアカデミーでは、苦手な英語については周囲の生徒に助けてもらい、逆にプログラミングを教えていたようだった。

中学2年の女子生徒は、自分が習っていた茶道の知識を生かして、茶道の文化を学べるアプリをつくった。中学生の彼女が言うには、いまの「若い世代」は日本文化に興味をもつきっかけがなく、敬遠していると感じたことから着想を得たという。

アプリでは、茶道で使う道具の役割と茶を点てる順序を学ぶ。進んでいくと学んだ内容に関するクイズが出題される仕掛けだ。このアプリは来場者の評価が高く、アップルの「WWDC」に最年長アプリ開発者としてゲスト参加したことで有名になった若宮正子からも票を得た。若宮によると、このアプリは高齢者にも使ってもらえそうだと感じたようだ。

この生徒の夢はロボット技術者になることだ。母親はエンジニアだが、若いころにプログラミングの経験がなく、独学で苦労したのだという。その影響もあってか、彼女は熱心にプログラミングに取り組んでいた。

■「共感力」は世界へと広がる

生徒の全員が自分のアイデアをかたちにできたわけではない。最後の1週間でのアプリ開発は思ったよりも時間が足りなかったようで、現実的なアイデアへの軌道修正を余儀なくされた生徒も少なくなかった。それでも誰もが前向きに取り組み、「プログラミング言語の基礎が身についてよかった」という声が上がっていた。

自分のアイデアをかたちにできたという実績は、生徒たちの自信につながる。それに仲間たちと協働しながら「学ぶ」方法を身につけることもできた。自分が何をしたいのか、周囲の立場になって自分がどう必要とされているかを考えるきっかけにもなったという。こうして互いに「共感」を得ることは、Make Schoolが目指す「コミュニティづくり」そのものである。

ここで生徒たちが身につけたのは、「Be Inclusive, Empathize.」というMake Schoolが掲げるキーワードである。3週間という短い時間で知識や技術を詰め込むのではなく、周囲の人たちに対して「共感する力」を手に入れたわけだ。こうした共感が子どもたちに及ぼすエネルギーは、サンフランシスコから東京へ、そしてまた世界へと広がっていく。それがMake Schoolがもつ力なのだ。

 

 

 

 

本田友人