プロ野球選手が憂う野球少年の現状 強制され、指導者の顔色を窺いながら練習・試合をこなしているのは、詰め込み塾と学校の監獄化と全く同じ

 現在の日本球界屈指の一流プレイヤー筒香選手が、メディアを通じて報道された発言が話題になっているようです。内容を読むと、現在の教育状況と全く同じことを語っていました。
 子供たちを取り巻く状況を、教育機関だけではなく社会的な問題として問題視する潮流がより強くなってきたことを感じさせます。

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DeNA筒香「球界の変わらない体質」にモノ申す 子供の「野球離れ」は大人が作り出した必然だ リンク

○日本野球界の3つの問題点
 子供たちのためにと考えてみた時に最初に気がつくのが『勝利至上主義』です。
 
 僕も小さいころに野球を始めましたが、野球を始めた瞬間から『勝たなあかん』と言われました。そして、『こうやって投げるんや』『こうやって打つんや』『こうやって走るんや』『こうやってプレーするんや』と言われてきました。皆さんの時代もそうだったと思いますが、『勝たなあかんよ』『勝たないと意味がない』と言われ続けてきたんです。

 僕は堺ビッグボーイズで中学からお世話になり、ここまでやってきましたが、今の少年野球を見ると、『楽しいはずの野球なのに、子供たちは楽しそうに野球をやっていない』と思うことがすごく多いです。

 2つ目は、今の子供たちは、大人、指導者の顔色を見てプレーをしている、怒られないようにプレーをしているということ。

 本来なら、いいプレーをしよう、もっと遠くまでボールを飛ばそうと思って野球をしないといけないのに、ここで打たなかったら怒られる、エラーしたら怒られると思いながら野球をやっているように思います。

 3つ目は答えを指導者や親が与えすぎるので、子供たちが指示待ちの行動しかできないということ。自分から動いて、何か行動を起こすということが凄く減ってきているのではないかと思います。

 もちろん指導者が勝ちたくなる気持ち、いろいろ教えたくなる気持ちはわかりますが、それが将来の子供たちのためになっているかと言えば、なっていないと思います。指導者も、親も言いたいのはわかりますが、そこをじっくり我慢し、見守ることが大事ではないでしょうか。

 あとは『勝ちたい』となれば、どうしても練習が長くなります。まだ子供なのに、朝早くから夕方過ぎまで練習をしている光景をよく見かけます。これも問題です。

 そして、今、多いのが、高校野球やその上に行ったときに肘や肩を壊して手術をすること。僕も、未来のある子供たちが、潰れていくのをたくさん見てきました。そういう例が本当に多いです。勝ちたいと思えば、指導者は『変化球を多く投げろ』とかいろいろ要求をします。それが子供の負担になりますし、スケールの大きい人材、育っていないのが現状だと思います」

○トーナメント戦の弊害
「体ができているプロ野球選手たちでさえリーグ戦を行っているのに、骨格もしっかりしていない子供たちが、トーナメントで『この試合に負けたら終わり』という試合をしていることも問題です。

 1つ負けたら終わりのトーナメントは、勝ちたいという気持ちが強くなります。そうなると変化球も多くなるし、ミスをできないという戦いがかなり続いていくことになります。

 そして、試合に出ている子供たちは何試合も続くので、体の負担が多くなります。一方で、出ていない子供たちは面白くない。せっかく野球を始めたのに、いろんな経験を積むことができないという弊害があります。堺ビッグボーイズは4年前からリーグ戦を3カ月間実施しています。トーナメントの弊害がないのはいいと思います。

 MLBでは『何歳までの子は何球投げたら中何日開けないといけません』とか、子供の体を考えたいろんな規制が何年も前から始まっています。しかし日本は未だにそういう規制がないので、子供たちが苦しんでいます。少年野球のときは良くても、子供たちの将来には良くないことが多いと思います」
  
 ドミニカ共和国では指導者は何も言わずに子供たちを見守っています。そんな中で、小学生の子供たちがジャンピングスローやグラブトスを当たり前のようにやっています。指導者はそうしたプレーでミスをしても何も言いません。だから子供たちは失敗を恐れず、何回も失敗しながら新しいことにチャレンジしていきます。僕は、子供たちが何の躊躇もなくチャレンジしている姿を始めて見ました。

 バッティングもとにかくフルスイングです。ドミニカには16歳から入ることができるMLBアカデミーを30球団が設置しています。これも見学しましたが、ここでも変化球を投げる子はいませんでした。ほとんどがストレートをど真ん中に投げ込む。バッターはそれをフルスイングする。というのが基本です。

 こういうドミニカ共和国の小学生と、日本の小学生が今の時点で対戦すれば、日本のほうが大きく勝ち越すと思います。日本では小学生から変化球を投げますし、細かいプレーも身につけますから。でも、それが大人になったときには、すっかり逆転して、凄い差になっています。

 もちろん日本がすべて悪いのではありません。日本にもいいところはたくさんあります。でも遅れている部分があるのも事実です。内向きになるのではなく、海外に目を向けてそこからいろいろ吸収するのも大事ではないでしょうか」

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 トーナメント戦の弊害は、追い詰められて心の奥では逃げ出したくなる玉砕覚悟のトップ校受験や、親の意向が強い中学受験にダブります。

 後半のドミニカ野球については以前にも投稿しましたが、技術などの細かいことに拘らず、まずは伸び伸びとプレーさせ、野球の楽しさを体感させています。そこでの失敗も、本人の試行錯誤に繋がり、自然に基本が身についていくのでしょう。

野球版の天才教室がここにあるようです。

 

 

 

 

坂本伸一