「親の失敗談」が子供の“最高の栄養”になる 「どう生きるか」を考える材料は身近にある

 子供たちは学校・塾以外の時間を家の中で過ごしていますが、家庭ヒアリングの内容を読む限り、保護者と生徒の会話はどうしても勉強やしつけ等、親が主導権を持った会話になっているようです。
 しかし、心の中ではお互いに聞いて欲しい違う話題があるはずです。でも、どこか歯車がかみ合わなかったり、対面で話すには恥ずかしさもあり、ギクシャクしてしまうのではないでしょうか?

 そのようなときに、親側からこんな切り出しをしてみては・・・という話がありました。
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○話す人と聞く人の心をつないでくれる
 杉山少年物語(筆者自身の体験談です)は、多くの場合、うまくいったことよりも失敗したことのほうが受けました。でも、時には一生懸命頑張って成功した話もしました。
(中略)

 こういう話は、話す人と聞く人の心をつないでくれます。心理学の言葉を使っていえば、自己開示によって親密度を高めることができるということになります。つまり、この人も自分と同じ人間なんだということがわかることで、ぐっと親しみが増すのです。「お父さんもドジや失敗をしていたんだ」「お母さんも運動が苦手だったんだ」と感じれば、自然に親しみが湧くのです。

○親の話から、生き方のモデルを学ぶことができる
 ですから、私は、親である皆さんも、自分が子どもの頃の話をしてあげるといいと思います。皆さんのお子さんは、親である皆さんが子どもの頃のことをどれだけ知っていますか? ほとんど知らないのではないでしょうか? だいたいいつも、「なんで○○できないの。○○しなきゃダメでしょ。ああしなさい。こうしなさい」というようなことばかり言っていて、きっと子どもたちはみんな聞き飽きています。

 皆さん自身の物語をしてあげると、親子の親しみがより一層増すのはもちろんですが、それ意外にもいいことがいっぱいあります。子どもはそこからなんらかの教訓を学ぶかもしれません。

 これは東京都の吉田さんという40代の女性に聞いた話です。吉田さんの長女は、今は高校生ですが、中学1年生のときに部活動の人間関係で悩んで、それを吉田さんに打ち明けてくれたことがありました。そのとき、吉田さんは娘さんの話を共感的に聞きつつ、自分が同じように中学生の時にクラスの人間関係で悩んだ話をしてあげました。すると、数年後に娘さんが、「あのときお母さんが自分の話をしてくれて、ありがたかった。お母さんも同じことで苦しんだんだ。だから、私のこともわかってくれているって感じた。それに相手との距離の取り方がすごく参考になった」と話してくれました。

 また、親の話から生き方のモデルを学ぶことができるというのも大きなことです。子どもたちは人生経験が少ないので、生き方とか人生というものがまるでわかっていません。テレビや本、マンガ、アニメ、小説、伝記などで少しずつそれを学んでいくわけですが、いちばん身近な親の物語をしてあげるとすごくよい栄養になります。目の前にいる実在の人物ほどインパクトのあるものはないからです。

 さて、こういったことは職場でも当てはまります。職場の上司という立場の人は、よく「○○じゃダメ。ああしなさい。こうしなさい」という話をしてしまっていると思います。聞いている人は、いい加減うんざりしています。それよりもぜひ、自分自身の物語を話してあげてください。そのほうがみんな真剣に聞いてくれますし、親しみも湧いてきます。何らかの教訓を得て生かしてくれるかもしれません。とにかく、いろいろな面でよい波及効果があると思います。

 ただし、家庭で話すときも職場で話すときも、気をつけてほしいことがあります。それは、説教、道徳教材、自慢、愚痴などにならないようにすることです。そうではなく、物語であり文学であることが大事です。物語・文学のよさは、押し付けがましくなく、それでいて栄養がたくさんあり、そこから何を得るかは聞く方の自由ということです。

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 筆者の具体的な失敗談は省略しましたが、最も身近な大人である親も、同じ年頃の頃は進路や仲間関係で悩んでいたこと、その後の人生の中でも失敗をしてきたことを話し、それを乗り越えてきた経験で得たことを語り合うことは、お互いを観察し、同化しあうことに繋がるのではないでしょうか。

 勿論、先生・塾講師でも可能なことですが、授業内でこのようなことを行なうと脱線することは目に見えており、追求への緊張感を削ぐことになるのでNGでしょう。

 

 

 

 

坂本伸一