子どもに「夢を持て」と言う前にすべきこと~未来に続く「土台」を用意できていますか?~

リンク

私もかつて、中学生や高校生に、具体的な職業を夢に持たせるのがいいだろうと思い、そのためのプログラムを作り、あれこれ実施してきた経緯があります。

しかし、大人がよかれと思って、子どもが夢を持っているかどうかを問うていくと、「夢を持っている子=よい子、夢を持っていない子=残念な子」というレッテルを無意識だけど結果的にはるようなことにもなりがちでした。教育の現場では、ややもすると、夢を持つ子どもの割合を増やすことを目標にしてしまう可能性すらあります。

◆職業より前に、考えるべきこと
もちろん、具体的な職業を夢に持っていない子が悪いはずはありません。当時、私が作ったプログラムのよしあしも当然あったかとは思いますが、そうした指導によって、すべての子どもたちが夢を本気で持ち、追いかけるようになるわけではありません。むしろ、子どもたちにはなかなか響かないようにも感じました。

そうした中で感じたのは、大人が子どもの未来に対して焦点を当てるべき部分は、本当に「具体的な夢、職業的な目標の有無」なのかということです。「何になりたいのか?」ということばかりに着目しがちですが、その前に、もっと必要なことがあるのではないかと。

私はこれまで20年間で数万人の小中高生を対象に講演会を行ってきましたが、そこで常々感じてきたことがあります。それは、子どもたちに将来なりたい職業がないということではありません。実は、別の深刻な問題を感じてきたのです。それは、子どもたちに「希望」がないということでした。 つまり、現在の自分に対して自信がないために、将来への期待が持てない状態にある、ということでした。

特に現在、勉強ができないことで自分の将来に期待が持てないケースが最も多かったのです。多くの子どもたちは自分の長所に気づいておらず、単純に勉強ができるか否かなどごく限られた尺度で自分の価値を判断していまい、これ以上は無理という“天井”を自分で設定しているのでした。これでは、将来に期待を持つということは非常に難しくなります。

そもそも、すでに好きな職業、目指したい職業がある子どもは別として、そうでない子に対して、単純に将来の夢として、職業の話をすると、「何かしら、なりたい仕事を決めなければならない」という義務感を伴ったニュアンスにもなりがちです。

しかし、職業だけに限定せず、もっと広く個々人の「希望(子どもたちが自信を持ち、将来に期待が持てる状態のこと)」をどう育てるかという話になれば、状況が違ってきます。「もしかしたら自分にも色々と可能性があるかもしれない」という思いが出てきます。ですから、直接的に将来の夢として職業を考えることよりも、まずは自分に希望を持てる状態にすることが先決なのではないかと、強く感じています。

希望学」という研究調査でも、希望を持つ子は、その後、活動範囲が広がったときに、自分のやりたいことに出会う可能性が高く、結果として「夢」を持つに至るといわれています。

こうしたことから、私は多くの保護者の方々に対し、子どもに希望を持たせるための3つのことをよくお話してきました。


◆希望を持たせるための「3つの視点」

・子どもの好奇心に対して制限を加えない
子どもの好奇心は計り知れません。生命の危険が及ぶこと、自他を害することに対して制限することは当然ですが、子どもが興味関心を示したこと(例えば、昆虫、動物、料理、パソコン、モノづくり、各種スポーツ、さらには歴史、そろばん、音楽などなど)に制限を加えたり、無理にやめさせたりはしないほうがいいでしょう。このような好奇心が子どもの中で原動力となって、自信をもち、希望を持てる人間へと成長させていきます。希望の芽が出ようとしている上を“コンクリート”で覆わないことです。

・子どもの能力に限界をつくらない
子どもの成績表をみて、「うちの子は、これぐらいまでしかできないから」と親が知らずのうちに天井を決めてしまっているということがあります。例えば5段階評価で3であれば、口ではもっと上の成績を取って欲しいといいますが、心の中では、うちの子は中ぐらいという意識があったりします。そうすると普段の言動がそれなりになっていきます。

「子どもには可能性が無限大にある。うちの子も同様である」と信じてあげることが大切でしょう(ただし、過大な期待をかけてプレッシャーを与えることは逆効果になりますので、そこは注意が必要です)。希望の芽を小さい箱で覆わないことです。

・勉強に関しては、失敗や間違いにフォーカスせず、「何が学べたか」にフォーカスする
よくあるパターンとして、「テストで点数が悪い→親は怒る、または嫌味を言う→子どもは頑張ったフリをするか、諦める→さらに悪化」ということがあります。これは子どもの「できていないこと」に焦点を当ててしまっているためで、親の心の中で「怒りや不満」という感情がたまり、爆発しかねません。

しかし、「学び=成長は、失敗や間違いから生まれる」ものです。怒るかわりに「何が学べたか、次はどうすればうまくいくか?」ということにだけ焦点を当てるようにするのです。やがて「自分はできる」と実感でき、自信が生まれ、希望がでてきます。希望の芽を摘み取らないことです。

以上の3つがなされたなら、あとは放っておくことです。あれこれ余計なことはせずにいれば、子どもは自分で希望の芽を真っ直ぐに伸ばしていきます。

「夢を持つ=なりたい職業を持つ」ということはとても素晴らしいことです。しかし具体的な職業上の夢を持たない子に対して、急かして何か決めさせようするよりも、まずは希望を、つまり自分にもできるかもしれないという期待感を持たせていく方が自然な形ではないかと思います。

このようにして育った、自分自身に希望を持つ子どもたちは、やがて将来の目標を見つけ、さらには実現させるための手段もたくましく見つけていくことでしょう。

~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~
以上引用終了

 

 

 

 

華里